女性中心で動く会社へ

【白河】女性が優れている面がたくさんあるとおっしゃっていましたが、働きやすくなって実力を発揮しやすくなると、選んでくる商品、つくる売場、接客、そういったものがすべて強みになっていく。そうお考えになっているということですか?

【大西】そうならないと、たぶん無理だと私は思っています。今朝も、「ニッポニスタ(NIPPONISTA)」という日本の良いものを紹介するニューヨークのプロジェクトを担当した女性8人とミーティングをしました。みな30代前半です。彼女たちに「あなたたちが40才になったときには、女性がこの会社の経営を担って、女性中心で動いていく会社になるのだから、そういうつもりでいてほしい」と話したばかりです。

大西 洋●三越伊勢丹ホールディングス社長。1955年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。79年伊勢丹入社。紳士部門を歩んだ後、伊勢丹立川店長、三越MD統括部長などを経て、2009年伊勢丹社長執行役員、12年から現職。

【白河】そこまで女性に賭けていただいているんですね。感動しました。

【大西】男性に対して、不公平じゃないかということですが、女性が主となるバランスになっていけば、会社として一番力が発揮できるのではないかと思います。年齢軸もあります。将来的には40から45歳ぐらいの人材がトップを担うのがいいと思っています。

【白河】業界トップの三越伊勢丹でそこまでの危機感を感じていらっしゃる。それは24時間のコンビニや、アウトレットモールとか、さまざまな業態に対しての危機感でしょうか?

【大西】小売業の中でも百貨店は6兆円、全体の4%しか売り上げがないんですね。なくなってしまっても不思議ではない。百貨店全体にそういう危機感がなさすぎると感じています。生き残っていくためには、残れるだけの独自性とクオリティが必須だと思うんです。伊勢丹の場合は象徴は新宿店ですが、今が転機だと思っています。

【白河】メンズ館や食品売り場の刷新……。常に斬新なことを打ち出しているように見えるのですが、まだまだなんですね。ものを売ってはいますが、結局は人。時短も人材戦略なんですね。

【大西】本当に最後は人です。ものの独自性や、商品力はすべて人がつくっていくものです。それが企業力につながっていくのです。