こうしておにぎりは美味しくなった

14年、ファミマは、中食の改革を目的に掲げた専門の新部署を立ち上げた。その名も「中食構造改革推進部」。従来の縦割り式の各部署を横断することで、あらゆる商品の抜本的なリニューアルを推し進める。

改革第一弾はおにぎりだった。おにぎりはコンビニの顔とも呼べる商品だが、これが「あまり美味しくなかった」。商品本部長の本多利範氏によると、米を炊いた後の蒸らし工程に問題があったという。

「これまでは、炊飯後の米を蒸らした直後に、98度から一気に瞬間冷却していました。しかしこれだと、まだ米に水分が付着しているままなので、味が劣化してしまうんです。これを改善するため、蒸らした後に水分を吸い取る装置を付けました。70度以下に冷ました米を冷却すれば、米の旨みは失われずに保存することができます」

海苔も季節に合わせて乾燥度を変化させ、さらに米の水分が移らないよう、3層シートに取り換えた。おにぎり、弁当、から揚げ、サラダ、パスタ、ラーメン……、あらゆる商品の問題点を徹底的に改善した。

サンドイッチのハムは、これまでメーカーからスライスしたものを仕入れていたが、塊肉を仕入れ、工場でスライスするようにした。美味しい部位まで使えるほか、ハムのしっとり感は増し、コストは下がった。パスタ用のトマトソースも、パック詰めの仕入れをやめ、工場で一からつくるようにした。

(左)「お肉ごろごろビーフカレー」。その名の通りの肉のゴロゴロ感に加え、ご飯の立体的な盛り付けが特徴。
(中央)「育てるサラダ」。買ってびっくりした人も多い。これは水をやって「育てるサラダ」なのだ。
(右)ファミリーマート 中食構造改革推進部長 足立幸隆氏

当然、新機械導入などコストもかかるため、工場の工程も見直した。

「13年頃、多品目製造を抱えた工場は疲弊しきっていました。そこで各工場の生産アイテムを、およそ200アイテムから100アイテムへと半減させました。それまで弁当やサンドイッチなど、管理温度帯が異なる商品も一工場で生産していましたが、これも新たに専門工場をつくり、分散化しました。結局、美味しいものをつくるためには、ある程度投資も必要なのです」(足立氏)