ディテールを手放す勇気をもって
みんな真面目だから、ディテールまで把握しようとする。私も最初はそうだったけれど、小さいことにこだわっていると細部に溺れて、しまいには大局が見えなくなってしまうのです。完成度を上げたくなるのが日本人のいいところでもあるし、私自身も実はそういう性格です。でもディテールまでかっちり決めてしまうと、コントロールすべきことが多くなりすぎる。その結果、長時間労働になっていくのではないでしょうか。
もちろん、誰でもパーフェクトな結果を出したいから、そこを手放すのは怖い。だけど自分や部下の成長を考えると、常にオーバービュー(概要)をつかむ訓練をしたほうがいい。管理職の役割は、そうやって自分の代わりが務まる人材、「ネクスト・ミー」をつくることなんです。
長い女性のキャリアの中で、出産や子育てですごく大変な時期は、ほんの2、3年だけなんですよ。それに、100%ではなく、80%の力を発揮できればいい。そう考えれば、家庭とキャリアを両立することはできる。だから、どちらかを選ばなくてもいいんです。
私はスウェーデンでH&Mのような大きな企業でも、女性がワーク・ライフ・バランスをとりながら、管理職になっていく姿を見てきました。そういう働き方を日本でも進めていきたい。
大事なのはメンタリティーをチェンジすること。日本の企業でもできるはずです。私がそれに貢献できたらうれしいですね。
1975年生まれ、東京育ち。清泉インターナショナル学園、米ラファイエット大学卒。マテル東京支社、アントステラ東京支社を経て、2005年、ストックホルムでMBAを取得、H&Mの研修生に。07年アジア進出に伴い香港エリア・マネジャー、08年H&Mジャパン社長に就任。2児の母。
構成=長山清子 撮影=宇佐美雅浩