頭脳労働と作業労働を切り分ける
こうした変革を先頭に立って進めているのが高岡社長だ。日本的経営にメスを入れることで、旧態依然とした人事と営業の改革に挑む。
「労働生産性をもっともっと高めたいですね。当社は残業時間も減っており、労働生産性は相当高いほうですが、まだまだ労働時間の8割程度を作業が占めていて、本当の仕事はできていないと思っています」
高岡社長が言う「本当の仕事」とは考える仕事、付加価値を生み出す仕事のことだ。クリエーティブな頭脳労働と純然たる作業労働を切り分けて、それぞれに応じた処遇をすることがフェアで望ましいとする。同社で進めている非正規社員の正社員化は、終身雇用を守りつつ、業務内容や転勤のあるなしなど勤務体系の異なる多様な働き方を実現するための布石でもある。
「これからは工場で働く技術者を除き、ホワイトカラーはすべて在宅勤務可能にします。自宅にいてもスカイプ会議などでリアルタイムにつながる環境があるので、考える仕事はどこでもできる。重要なのはどこで働いたかではなくアウトプットなのです」
在宅勤務なら通勤時間がなくなるぶん時間に余裕ができるし、子育てや介護とも両立がしやすくなる。
「ネスレ日本が女性の新しい働き方をつくることになります。私たちは日本で100年以上お世話になっている外資企業です。その恩返しのためにも、グローバルに通用する新しい働き方の仕組みをつくりたいですね」
撮影=佐伯慎亮