――女性を“活躍”させるためには、その伴侶たる男性を含む全従業員の長時間労働を減らし、両立しやすい社会をつくることが急務という意見もありますが。

【守口】20年前に比べると、育児は夫婦共同でやるものだという意識がだいぶ高まってきました。でも、50代以上の男性管理職は、口では「応援している」とか言いながら、どこかで育児中の女性、ひいては女性の活躍全般を快く受け入れていない気がしますね。

【田坂】私は、そもそも男女にかかわらず、マネジメント(経営幹部)だったら、育児や家庭に重きを置くのはどうなの? という気はします。現実問題、会社ではいつ不祥事が起きるかもしれませんし、対外的にすぐアナウンスしなければいけないこともあります。そんなときに、家庭優先で定時きっちりに帰られてしまうと、果たしてその人がマネジメントの責任を負っているといえるのか、と。

【柳田】だから私は、「一億総活躍」にしても「女性活躍」にしても、国民や女性が多様な選択肢から自分の生き方を選べる状況にしたほうがいいと思う。たとえば、育休だって3年取りたい人もいれば、すぐ復帰したい人もいる。専業主婦になりたい人もいるし、管理職になりたい人もいる。なるべく多くの選択肢から選べる状況をつくるのが政府の仕事であって、今の「女性活躍」という方向性は、かつてゆとり教育を押し付けられたときの既視感を覚えます(笑)。

【田坂】女性を優遇することで、男性がやる気をなくしてしまうことも怖いですね。

【山野】女性にげたを履かせてまで、管理職の女性比率を30%にというのは、同意できませんね。

【柳田】できない上司につけられた部下ほど、かわいそうなものはありません。

【田坂】同感です。上がいいから下が良くなるし、ボスの強さで部下の出世が決まりますから。無理にげたを履かされた女性上司だって不幸ですよ。わが社ではもう女性活用を重視するフェーズはとっくに過ぎ、いまではLGBTや多様な国籍を持つ人との共生にスポットをあてています。そうしないと、会社としても成長しませんし。実際、少し前まで日本支社にはインド人がたくさんいましたが、その多くが帰国してしまいました。

【柳田】日本という国自体が魅力的に、そして経済発展しない限り、優秀な外国人も来てくれませんよね。そして、日本が経済的に強くならない限り、保育所増設などの福祉も進まない。女性活躍も重要ですが、経済発展のための施策を考えるべきだと思います。

■「女性活躍推進法」に関する要望書

先般成立した女性活躍推進法につきまして、下記により要望いたしますので、宜しくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。

(1)盤石なインフラなきまま、活躍するのは難しいこと。保育所や、長時間労働のない働きやすい職場環境づくりなどの整備もしっかり進めてください。
(2)企業内で活躍する人だけでなく、独立・起業する女性の応援もお願いします。

以上 第9回 座談会参加者 一同