「働き方革命」はなぜ必要か
――長年の慣習を変えるには、トップが発信し続けることが大切ですよね?
【鈴木】これは100年続いた働き方を変えようという、証券業界における働き方の革命なのでね。気を抜くと、ちょっとずつ時間が延びちゃうんです。私なんかは本当にしょっちゅう言っていますよ。仕事を全然しないヤツも、帰れと言ってもきかないヤツも、両方とも不良社員だと。けれど、残業をしている人を見て、役員クラス、支店長クラスは「あいつ頑張っているな」と思えてしまうんですね。まだ心のどこかに悪しきDNAがある。ずっと言い続けないといけません。
【松本】カルビーでは分権しているので、トップがすべてを決めるということはない。チャンスを与え、失敗してもいいからどんどん自分で勝手にやってくれと言っています。一方で会長になってから口を酸っぱくして言い続けているのは、「会議はできるだけやるな、資料をつくるな。時間ではなく成果を求めている」などの私の基本的なものの考え方です。
【藤森】私の掛け声のもと、毎月「ワークアウト」という活動をしています。最小単位のチームで、1時間集まって、すぐにやめるべき無駄な業務を3つ挙げましょう、という活動です。スポンサーと呼ばれる意思決定者は、テーマや趣旨をメンバーに説明し、一度退席します。意見交換が終わり、結論が出たタイミングでスポンサーが戻ってきてその場でイエスかノーかをジャッジします。それを全セクションでやる。その結果はすべて私のところに届くようになっています。
【田川】意識しないと残業は増える。データの収集分析をしないといけません。うちでは、多様性の活用指標(ダイバーシティINDEX)をつくって、社員へのアンケートと併せて推進状況を見える化しています。
――なぜ働き方改革が必要なのですか?
【鈴木】いい仕事をするためです。メーカーさんと違って、証券会社は、他社と似たような商品を売っているわけですよ。カルビーの「かっぱえびせん」みたいなキラー商品がなくて、新しい投資信託だってすぐにまねされてしまう。
どこで買っても同じものを、わざわざ当社で買っていただくには、いかに優秀なセールスを雇うかがすべてなんです。
「やっぱり大和は違うね」と言ってもらえるように、ロイヤリティー高く働いてもらう。それが重要だと思うんです。
もう一つ、日本の企業だから、やみくもに人を切ることはできません。だから全員に生産性高くしっかり働いてもらえるように、働き方を変えないといけない。
【田川】うちでは、人材を「人財」と呼んでいます。経営者として社員に投資していますが、社員も我々に時間を投資する。双方向の財の質を高めていかないといけない。改革を進めて質を高めることは、働きがいにつながるんです。
【松本】長時間労働の最大の罪は、やらなくてもいいことばかりやっているから、本人が成長しないまま年をとるということ。そういう人が増えると組織がダメになる。結果として国がダメになっていく。悪しき労働慣行というのは、人をダメにして組織をダメにして国をダメにしているんです。これがここ25年間の日本。だから、どんどん世界の競争で負けていっているわけです。