長時間労働をやめると、たくさんのメリットが

――長時間労働をやめて変わったことは?

【鈴木】女性のためにやめたわけじゃないが、労働時間のコントロールは女性の活躍には必須です。我々の業界では、短期の売買による「手数料稼ぎ」のビジネスは終わりました。資産導入や新規開拓を営業評価の軸にしたら、女性の営業成績がいいんです。しかしトップにいた人が3、4年でいなくなる。辞めているんです。それではいけないと時間のコントロールをしたら、優秀な女性が働き続けて、管理職も出るようになった。夜遅くまで働いた人が上に行く会社は平等じゃありません。それは腕立て伏せをたくさんしたヤツが部長だ、という選び方ですよ。

社員が勉強するようになることもメリット。弊社は、CFPの資格保有者が業界最多となりました。育休中にとる女性もいます。結果的に人材の質が高まり仕事の質も高まり、お客さまに貢献できる。

【松本】自分の時間が増えます。その時間で知識や教養を身につけたり、家族や友人と過ごす時間を増やしたり、健康でいるために努力をしたり。そうすることで、優秀で人間として魅力的になっていくものです。一日を2度楽しめるくらいの、仕事以外の時間が絶対に必要です。

【藤森】単に8時間勝負というだけじゃなく、残りの16時間をどう過ごすかがとても大事。イチロー選手が誰よりも素振りをやっているように、8時間で成果を挙げるためには、残りの時間で自分を磨くこと。良い相乗効果が出始めています。

LIXIL 社長 藤森義明氏「仕事は8時間勝負。スポーツと同じ。120%の力で働けば業績が落ちるなんて考えられない」

【田川】JTB首都圏は約170店舗を持つ会社ですが、労働時間が減ったうえで利益が増えました。効果がはっきり見える化できたので、グループ内の他の部署へも同じような仕組みを導入しようとしています。

――社内外の抵抗勢力や、お客さまとのトラブルなどはありましたか?

【鈴木】19時前退社をやろうと言ったときは、副社長クラスまで「これは無理ですよ」という反応でした。

例えば「(夜)9時に来てくれ」とお客さまに言われたら、「それは行きなさい」と言いますよ。でも毎日呼ばれるわけじゃありません。会社の方針を説明しても、毎日来いという方がいたら、取引がなくなっても仕方ないと言いました。お客さまも当社を選ぶ権利はあるけど、当社にもお客さまを選ぶ権利はあるんだから。

結局、大きなお客さまを担当しているような優秀な営業員は、ちゃんとお客さまを納得させるので、お客さまを失うようなことはなかったんですけどね。

【田川】うちはなかなかそうはいかないですね。例えば修学旅行の担当者は、どうしても長時間労働にならざるをえない。そこで、自分たちの働き方を見直すこと、そして、どう効率よくお客さまと連携をとっていくかをいくつかの課でプロジェクト化して取り組みました。それによって、少しずつ成功事例がたまってきている。これらをグループ全体に広げていくことが大切と考えています。