総務大臣 原口一博(はらぐち・かずひろ)
1959年、佐賀県生まれ。83年、東京大学卒業後、松下政経塾入塾。87年、佐賀県議会議員当選、96年、衆議院議員初当選。2003年、民主党ネクスト規制改革担当大臣、人権・消費者問題担当大臣就任。09年より現職。
「タレント化した政治家」の筆頭である。親しみやすく、わかりやすい。そして博識。どんなテーマでもそつなく語る器用さは、テレビにうってつけで、抜群の知名度を誇り総務大臣にまで上り詰めた。
総務省は放送と通信の所管官庁であるが、器用な原口氏は、放送だけではなく通信への配慮も怠らない。テレビを踏み台にしておきながら、「私は既得権益の代弁をする気はまったくない」とメディア改革も口にする。
改革の一つがクロスオーナーシップ規制だ。日本では新聞社が系列テレビ局の大株主となっているが、この比率を下げることで影響力を薄め、言論の多様性を担保する狙いだ。また、電波割り当てのオークション制度導入もその一つで、業界への新規参入を促して活性化につなげるという。大手マスコミの既得権をネット産業にも開放しようとする狙いもある。
政治資金疑惑で小沢批判が高まっている時期だけにTV、新聞への圧力とも受け取れる。原口氏は小沢幹事長のことを「生みの親」と呼ぶ。佐賀県議から1993年に総選挙に出馬し落選するが、そこまでは自民党系だった。その後、政治改革に目覚め、96年の総選挙では新進党から初当選。党首だった小沢氏のもとで修業を積んだ。メディアへの圧力も「親」をかばう、けなげさのアピールだ。
ところが、最近、大手マスコミ幹部と密かに会合を重ねている。世論調査で「総理にふさわしい政治家」に名を連ねるようになり、決定的な対立は損と踏んだようだ。メディア改革も先送りの可能性が出てきた。ある議員は「八方美人。すべてがタレントとしてのパフォーマンス」と手厳しい。器用さもゆきすぎると「器用貧乏」になることを忘れないでほしい。