ROAとは、収益性と効率性の掛け合わせ

「ROE経営」というような言葉を耳にされることがあるかもしれません。連載第1回で触れましたが、ROE(Return On Equity、自己資本利益率)とは株主が会社に拠出した金額(=自己資本または株主資本、といいます)に対して、どれだけ会社がもうけたか、という指標です。それに似た言葉で、ROAというのがあります。

●ROA=経常利益(あるいは当期純利益)÷総資産×100(%)

ROAとはReturn On Assets、総資産利益率のことです。総資産を使ってどれだけの経常利益を獲得することができたかを示す指標になります。利益のところは経常利益を使うこともあれば、当期純利益を使うこともあります。今回は経常利益を使います。

上の式は次のように書き換えられます。

●ROA=(経常利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×100(%)

少し戸惑われるかもしれませんが、2つのカッコ内の割り算を分数で考えると、分母と分子にあたる「売上高」は相殺されるため、元の式(ROA=経常利益÷総資産)と同じになります。その上で、カッコ内の(A)経常利益÷売上高、(B)売上高÷総資産に注目してみましょう。どこかで見たことがありませんか?

そう、(A)は「どれだけもうかっているか」を示す経常利益率、(B)は「どれだけ効率的に経営しているか」を示す総資産回転率を導くための式ですよね。

ですから、ROAの式は「収益性×効率性」を表すと言えるのです。

世間ではROEのほうが着目されがちですが、ROEは株主の立場に立った指標だと言われています。それに対し、このROAは経営者の立場に立った指標、すなわち、経営者が任されている総資産をどれだけ効率的に運用して利益に結び付けることができたかを表す指標になるのです。