それから一念発起、東京しごと財団の高齢者のための支援講習でケアスタッフ(ヘルパー2級)の養成講座を3カ月受講し、資格を取得。昨年7月から介護サービス会社にスタッフ登録し、ヘルパーの仕事を始めた。できれば介護施設で働きたいと思っていたが、採用されるのは福祉関係の大学を卒業した若い人がほとんどだった。

「定年になった私たち60歳過ぎの人が働けるのは訪問介護で、個人のお宅を訪ねる仕事が大半だというのがわかりました」

年金をもらう立場になったとはいえ、最低でも10万円ぐらいは稼げると期待していた。

「現実は、5万円ぐらいにしかなりません。会社までの交通費7800円は自己負担で、手取りは4万円ちょっとになってしまう。身体介護は時給で1800円ですが、私の場合、『特技』として『お料理』と書いたので、炊事や掃除、洗濯など家事全般の仕事が多くなり、最近まで1340円だった。それがやっと4月から3%アップして、1400円近くになりました」

さらに働ける時間を午後3時までにしていたのをフリータイムにしたことで、だんだん仕事が増えてきたと嬉しそうに話す。

「資格は取ったがあまりに率が悪いので、事務職に戻ろうと悩んだ時期もあった」というが、仕事にも慣れ、お年寄りが喜んでくれたり、「待ってたわよ」と話しかけられると「お金にならなくてもいいかな」と、気持ちがちょっと変わってきた。介護福祉士の資格も取りたいと思うようになったという。

介護の仕事を通して垣間見る男性の老後の姿から、林さんは男たちにこうアドバイスする。

「つまんなそうに生きてる男って可哀想。自分の好きなことをやるべきだし、見つからなければいろんなことに首を突っ込んでみればいい。今、厳しい生活の中で私は卓球に燃えていますが、男も女と同じように好きなことに目覚め、面白く生きたほうがいい」

※すべて雑誌掲載当時

(田辺慎司=撮影 藤川 太=モデル家計簿作成・解説)