男性も時短勤務が当たり前の時代がくる

【田中】ぼくも今の意見にまったく賛成です。今の企業に必要なのって、評価の仕組みの作り直しだと思うんです。だってこれからはいろんな働き方をする人が出てくるわけじゃないですか。男でも育児休業を取るかもしれないし、時短勤務を選択する人もいるでしょう。

武蔵大学助教 田中俊之さん

今までは、そういうものは女性だけが取るもので、男性は取らない、フルタイムで働くものだということでマネジメントをすればよかった。でも、これからはいろんなパターンが出てきますよ。

【川崎】ホント、そうなんです! 現場でもよく話すんですが、いまやもう「超未婚時代」じゃないですか。特に30代の男性なんて、彼らが40歳くらいになったときの未婚率がすごく高いわけです。今までの男性は脈々と、自分の母親の介護を奥さんにやらせてきたわけですが、結婚していない男性にその手は使えない。介護はこれから男性にとっても、自分自身の責任になりますからね。30代の男性にとっては、時短で働く時期がやってくるというのはもう、ひとごとではないんですよね。

すでにこういう時代背景なので、私も「時短で働くってそれ、女性活用の話だけじゃないよ? 君たちのことでもあるんだよ」と思いながら男性に話してるんですけど、全然分かっていないというか……。

【田中】しかも介護が育児と違うのは、終わりが見えないことです。子供は大きくなるにつれて手がかからなくなる。何年後、この子が何歳になればこれくらい手を離れるだろう、という予測が付きますが、親は何年後までその状態で生きるか分からないわけで。

――それどころか、認知症が進んだり、病状が悪化して、介護の負担がキツくなる可能性もありますね。

【田中】そうです。介護は逆に年々ヘビーになっていくかもしれない。それだけに、その“ひとごと感”はまずいですね。非常によくないです。

今「女性活躍」と言われている話は、たまたまそういう名で呼ばれているだけであって、これからの人にとっては、男女問わず全部当事者問題なんです。いざ自分が親の介護で忙しくなったとき、有休休暇をたくさん取らなきゃいけないとか、時短勤務をしなくてはいけない必要はきっと出てきます。でもそうしたらもう組織で評価してもらえない、となったら、やっぱりモチベーションが上がらないですよね。