仕事ができるあなたは、「部下に仕事をさせる」こともできていますか? どうやって仕事を振ったらいいのか、どうやって叱ったらいいのか、というのは、実は非常に難しいのです。そんなときの対処策として、今日からできることとは?

「仕事ができて当然」とあなたは思われている、というお話を前回書きました(参考記事:あなたは会社で「仕事ができる」と思われている? http://woman.president.jp/articles/-/747)。もちろんあなたは、自分がやるべき仕事は完璧にこなしていることでしょう。しかし、仕事は1人ではできません。キャリアの曲がり角に立つあなたなら、部下やアシスタントといったポジションで、あなたの仕事をサポートしてくれる人がいるはずです。その人たちとうまくコミュニケーションが取れているか、というのが本日のコラムのテーマ。単純な作業程度ならば「やっておいてください」と、簡単に指示をすれば、それほど問題は起きないはず。しかし、少し複雑な仕事、例えば言葉ではうまく説明できないような内容だと、話は別ですよね。

よくあるのが、今までは自分でやっていた仕事を一部切り出して、別の人に手伝ってもらうというケース。仕事の進め方をうまく説明できなかったり、任せた仕事の管理ができずに結局自分でやることになってしまったり……といった惨事が発生しがちです。特に、仕事を依頼する相手が「なにが分かって」いて「なにが分からない」のかを把握していないと、コミュニケーションが取れなくなり、さらに泥沼にハマっていってしまいます。ここで問題なのは、「自分の仕事を分割し、別の人に任せるという業務は、仕事において珍しいことではないにもかかわらず、その方法をきちんと教えてくれる組織はそれほど多くない」ということです。

組織の中での働き方は、ある種“伝承化”されてきた

「仕事の他人への振り方を企業は教えていないことが問題だ」と書くと、人によっては「そんなものは当然。かつても教えていなかった。上司や先輩から仕事を振られた経験から、自分自身でいろいろと気づき、考えながら、見よう見まねでできるようになるものだから」と怒りだすかもしれません。要は、日本企業が得意とするOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を例に出し、明示的に教えなくても日々の仕事の中から学び、身につけられるはずだ、という話なのですが。

この類の「伝承」が仕組み化されている、もしくは途切れていない組織なら、特に心配することはありません。しかし、企業によっては世代が分断されて、伝承の仕組みが機能しなかった時期がある、というところも少なくない。また、仕事が高度化することで、ある意味仕方なく細分化されていき、結果として、従来の伝承システムが崩壊してしまったというケースもあるはずです。さらに、一定の年齢以上の女性の場合、「私はある時期まで、その伝承の仕組みの中にいなかった」という人もいるでしょう。仕事自体は、誰かに教われば、もしくは用意されたマニュアルを見れば、できるようになるかもしれない。しかし、見よう見まねでといわれても、その見本が存在しない場合、組織の中で「どう働くのか」を勝手に理解しろというのが無理な話です。