「オープン」「クローズド」の2つの質問

人に「やる気」になってもらうために必要なのは、「できる」と思えるように促すことです。しかし、単に「君はできる」と伝えるだけでは人は動きません。人は誰しも初めてのことを前にすると思考や視野が狭まり、不安な要素ばかりに目が行きがちです。そこで今回は、相手の思考や視野を広げ、「できる」と思えるようにするツールとして、オープンクエスチョン(拡大質問)とクローズドクエスチョン(限定質問)をご紹介します。

まずは、人が「やる気になれない」状態を見ていきましょう。今回はAさんが部下のBさんに少し難しい仕事を任せようとしている場面です。Aさんはこれを機にBさんに成長してもらいたいと思っているようです。

A「今度の企画だけどBさんに主担当を任せようと思っているから、よろしくね」
B「え! 私にはまだ早いと思うんですが……」
A「いやいや、大丈夫だよ。できるって」
B「ですが……まだ分からないところもたくさんありますし、ちょっと自信がないです。私より、Cさんの方が適任じゃないでしょうか?」
A「それでも、せっかくの機会なんだから、やってみたらいいんじゃないかな?」
B「ありがたいお話ですが、やっぱり自分には難しいように思います……」
A「……そうかい? そこまで言うなら、少し考えてみるよ(……困ったな、できないからやらないんじゃ、いつまでたってもできるようにはならないし。かといって、無理にやらせてもよくないだろうし、どうしたらいいのかな)」

どうやらBさんは難しい仕事に対して「やる気になれない」ようです。Aさんの視点からは、Bさんには十分この仕事をやり遂げる能力はあると見えているようですが、Bさん本人はそう思っていないようです。こういう場合、もしかしたらAさんが「君ならできる!」と強く言えば押し切れるかもしれません。しかしそれでは「言われたからやる」という状態になってしまい、Bさん本人が納得してチャレンジすることにはなりません。それでは、本人に「できる!」と思ってもらうためにはどうしたらよいのでしょうか?