相手が気付いていないポイントを「質問」で明らかにする

今回の例では、「できない」と思っている相手に対して意見を押し付けるのではなく、相手の考えを引き出しながら、だんだんと「できる」点に目を向けるように促していました。ここで重要なのは、相手に何かを気付かせようと誘導質問をするのではなく、オープンクエスチョンを投げかけることで、本当の意味で相手に自由に発言させ、その中から重要な点についてクローズドクエスチョンを使って確認していくことです。それはつまり、相手が気付いていない点に対して意見で指摘するのではなく、質問を使って相手が考えることを支援し、2人の間での共通認識を積み上げていくということです。

相手を動機付けるためには、相手に「できる」と思わせる必要があります。そしてそのためには意見を押し付けるのではなく、相手の考えを引き出し、整理し、ひとつずつ積み上げていく作業が有効です。実は、今回の事例の質問の中には、次回ご紹介する質問の仕方が含まれていました。それは、「肯定的」で「未来志向」な質問です。次回は人を動機付けるために行う質問が、なぜ「肯定的」で「未来志向」でなければいけないのかをご紹介します。

清宮 普美代(せいみや・ふみよ)

株式会社ラーニングデザインセンター代表取締役、日本アクションラーニング協会代表、OD Network Japan 理事、WIAL公認マスターALコーチ、青山学院大学経営学部 客員教授。
東京女子大学文理学部心理学科卒。毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査などに責任者として携わった後、渡米。ジョージワシントン大学大学院人材開発学修士取得。マーコード教授の指導のもと、アクションラーニングの調査・研究を重ねる。帰国後、2003年株式会社ラーニングデザインセンターを設立。著書に、『質問会議』(PHP研究所)、『「チーム脳」のつくり方』(WAVE出版)、『対話流』(三省堂)、『20代で身につけたい質問力』(中経出版)。