質問で「思考」と「視野」を広げる

「できない」と思っている人に対して「できる」と思ってもらえるようにするためには、まず相手の視野と思考を広げてあげる必要があります。なぜなら目の前の不安や障害に目を向けるのではなく、より客観的に現状をとらえ直す必要があるからです。その上で、「できる」と思える点を積み重ねることが重要なのです。そこで有効なのがオープンとクローズドという2つの種類の質問です。

オープンクエスチョンとは「拡大質問」のことで、問いに対する答えが特に制限されていない質問を指します。一方、クローズドクエスチョンは「限定質問」を指し、質問の答えがYesかNoかのいずれかに限定されているのが特徴です。たとえば、「あなたは何が好きですか?」という質問はどのようにも答えられるのでオープンクエスチョン(拡大質問)ですが、「あなたはアイスクリームが好きですか?」という質問はYesかNoしか答えがないのでクローズドクエスチョン(限定質問)です。

それでは、こうした2つの質問はどのように動機付けに有効なのでしょうか? 先ほどの事例を元に考えてみましょう。

A「Bさん、新しい企画の件なんだけど、もしBさんに主担当を任せたとしたら何が起こりそう?」【オープンクエスチョン】
B「え、私はまだ主担当っていう役割がよく分かっていないので、何が求められるのか理解していないなど、いろいろ問題があるんじゃないかと思います」
A「なるほど、何が求められているか分からないところが不安なんだね」【クローズドクエスチョン】
B「はい。そうなんです。」
A「それじゃあ、今のBさんが今後どんな知識とか経験を積んだら、主担当を任せても大丈夫になると思う?」【オープンクエスチョン】
B「……そうですね、仕事の流れや、重要なポイントが分かっていることが必要かと思います」
A「なるほど。仕事の流れが分からないのが不安なんだね?」【クローズドクエスチョン】
B「はい、部分的にはお手伝いしたこともありますが、最初から最後までは担当したことがないので……」
A「それじゃあ、この仕事の全体の流れを把握するためには何が必要だろう? どんなステップがあればいいと思う?」【オープンクエスチョン】
B「そうですね……」

ここでは、AさんはBさんに対し、Aさんの持論を伝えるのではなく、Bさんが何を考えているのかを引き出すように、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を交互に使って問いかけています。オープンクエスチョンには相手に考えることを促し、考えや意見を引き出す効果があります。一方、クローズドクエスチョンは自分の認識が正しいかどうかを相手に確認するために使います。この2つの質問を繰り返すことで、相手と共通の見解を積み上げられます。そして、相手の意識を目の前の不安以外に向けることで、「できない理由」ではなく「できる理由」へと自然に視点の切り替えを促すことができるのです。