男性より早い成長スピードで
日産自動車は初鹿野氏がフル活用した企業内託児所のほか、女性をサポートする制度を数多く用意する。
在宅勤務もその1つ。育児や介護を理由に希望する人は月の半分を在宅勤務でき、そのほかの人は月に1回可能な制度だった。この月1回を5回に増やしたら、育児中の女性から気兼ねなく在宅勤務ができると好評を得ている。
有給休暇とは別の「ファミリーサポート休暇」も女性にはありがたい制度。運動会や保護者会の出席、あるいは子どもが病気のときでも使える。不妊治療もOKだ。年間12日で、うち5日が有給で、残り7日は無給だが欠勤扱いにならずボーナス査定に影響しない。
制度のおかげもあり、日産自動車の産休後復帰率は100%だが、「復帰後、仕事のモチベーションが上がらないママもいる」とダイバーシティデベロップメントオフィスの小林氏は言う。
「復帰後の活躍が期待される女性が、ママモードに入ってしまい、『子どもが12歳になるまで時短したい』と言うことも。でも、子どもの悩みはいくつになっても尽きないので、仕事も中途半端になってしまう時期が長いと本人のためにもなりません」
以前は復職時のセミナーしか開いていなかったが、今は「プレママセミナー」を加えた。3年後、5年後を考え、出産を経てキャリアをどう調整するかを上司やキャリアアドバイザーと話し合っている。
女性が長く働き、管理職に上がっていくためには出産までが重要と小林氏は考える。
「入社5年くらいまでに仕事の面白さ、達成感を味わわせ、男性なら5年のところを女性には4年で成長してもらいます。早い段階で異動を行い、違う分野の仕事も経験させます。2分野の仕事ができれば周りからの評価が高くなりますし、復職したとき違う仕事をあてがわれても怖くないでしょう」(小林氏)
女性を本気で育てようという強い意識が伝わってくる。
撮影=二石トモキ