【白河】キャリアの中断などを考えて、妊娠のタイミングを計画したりはしなかった?
【中野】私自身は、様々な人に経験談を聞きに行った結果、会社の先輩女性に「タイミングなど待っていたら産めない」と言われたことで背中を押されました。男性の先輩から「子づくりをはじめたからといってすぐにできるわけじゃない」という経験談を聞いたこともありました。ちょうど理解ある上司のもとで、仕事もある程度軌道に乗ってきた時期だったので、「ここなら戻ってこれるだろう」と思えたころに子づくりを解禁したら、想定より早く妊娠しました。実際にはその直後に異動になったのですが。
【白河】本でも「ある程度の無鉄砲さがなければ、20代の出産はできないのかもしれない」と書いていましたね。でも妊娠、出産、育休中に大学院、論文、出版とはすごいですね。
【中野】もともと東大在学時代から後輩向けの発信や啓蒙活動をしていたので、妊娠してからネットワークづくりや情報を集めて後輩向けに発信する活動をしたいと、個人的に取材をしていました。そこで今回の本になった15人に限らず、いろいろなケースがあることを知ったんです。一見子どもができて幸せな退職をした人に見えても、モヤモヤしている。子どもがいて「一線に戻る気がない」と見られている人でも、そこまで割り切っているわけではない。それぞれの決断や落ち着きどころまで、本当にいろいろな気持ちの変遷を経ている。最初からきっぱり割り切っている人なんていないんです。そこをちゃんと分析しようと大学院にいくことにしました。
【白河】立命館の上野千鶴子先生のゼミには入ったんですね。立命館って関西ですよね。でもそのときって……。
【中野】大学院の入試が妊娠9カ月のときだったんです。ぎりぎり新幹線に乗れる(笑)。
【白河】妊娠、出産を経て関西に通ったんですね! 旦那様は心配しませんでしたか?
【中野】夫やほかの家族は、普通だったら止めるかもしれませんが、止めないでいてくれたことに感謝ですね。と言っても、私が論文を書く時間を確保するために夫が自分の時間を割いてまでして応援してくれるというわけではありませんでしたが。一時保育は生後5カ月からずいぶん使いましたし、双方の両親にはこの時期から今に至るまで、育児面で非常に応援してもらっています。