女性は男性とはものの見方が少し違います。同じクルマを見ても、男性のようにエンジンや性能、加速性能などにはほとんど関心がありません。女性は内装デザインや座り心地、取り回しや安全性はどうかといった面を見ます。もし男性だけが商品を決定するのであれば、最高のエンジン、最高のトランスミッションをつくり、内装や取り回しに気がいきません。

サービスも同じです。興味深い統計があって、女性客の場合、9割が女性のセールスマンからクルマを買いたいと言います。自分と同じようにシートの座り心地や素材が大事だと思う人から買いたいのです。そして男性客の5割も女性から買いたいと答えています。販売スタッフの大半は女性が望ましいとわかります。

――企業内託児所を作って女性を支援していますが、そうした環境を整えるには大変なコストもかかります。

【ゴーン】ノーノー。それは私にとってコストではありません。投資です。生産台数を増やすために工場に投資するのと同じです。投資しなければ何の成果も得られません。多くの人が「女性の登用を推進すべきだ」と言うでしょう。しかし必要な環境を整えなければ絵空事に終わってしまいます。

託児所は若い女性にとって極めて重要です。いつか結婚し子どもが生まれても「託児所があるから仕事が続けられる」と確信できます。託児所がなければ「育児のために仕事を辞めなければならない」と思うかもしれません。私は、女性が個人的な選択で離職することは尊重しますが、環境が理由で仕事を辞めてほしいとは思いません。