利益の鍵を握るのは「データビジネス」
動画サービスにも力を入れた。2013年から「Vine」(ヴァイン)というスマートフォン(スマホ)アプリで、6秒間のショートビデオをツイッターに投稿できるサービスを提供してきたが、さらに、ライブ配信アプリ「Periscope」(ペリスコープ)もスマホでツイッターにツイートできるようにした。
「ツイッターの最大の特長はライブ性。今、起きていることをリアルタイムでツイートできるのが醍醐味だといえる。その特長を生かし、ペリスコープでは動画による新たな表現手段を提供している。動画にはテキストを上回る情報量があり、2016年上半期ではそれをどう使うのかといったことを利用者に提案してきた」(笹本氏)
すでに、企業によるペリスコープの利用も始まっている。新製品の発表会や記者会見でペリスコープを使い、その様子をその企業のツイッターのフォロワーや新商品に興味がある人にリアルタイムで見てもらうのだ。そういう使い方が国内でもすでに始まっている。
こうした取り組みが奏功し、「ツイッターの利用者が増えるのに比例して、Twitter Japanの売上高も伸びている」と笹本氏は説明するが、大きな利益を生み出すことができているのかどうかわからない。というのも、米Twitterの2016年第1四半期の純損益は7973万ドルの赤字なのだ。Twitter Japanは業績を公表していないものの、ビジネスモデルに米Twitterとの大きな違いはなく、安穏としていられない状況であることは間違いないだろう。
なお先般、東京証券取引所の株式上場が承認されたLINEも、2015年12月期の売上高は1206億円であるものの、純損益は79億円の赤字である。SNSで大きな利益を生み出すことはそう簡単ではないことを物語っている。
では、Twitter Japanはどのようにして収益を上げていこうと考えているのだろうか。笹本氏は、「データビジネスが一つの鍵を握る」という。Twitter Japanは利用者の名前や住所などといった個人情報を有していないが、ツイートされた内容から興味や関心の集合体をデータとして保有しているという強みがある。
「Twitter Japanの持つデータでは、30代の男性などといったターゲティングよりは、興味や関心に対してターゲティングできるというストロングポイントを持つ」(笹本氏)
例えば、高級スポーツカーを買う人をターゲットとしたいとき、従来であれば「30代男性で年収が1000万円以上ある人」などといった層を狙うのが主であるが、30代男性で年収が1000万円以上ある人が必ずしも高級車に興味があるとは限らない。だが、Twitter Japanの持つデータであれば、年齢や性別、年収などに関わらず、高級車に興味のある人をピンポイントで把握できるのだ。
このように、ポテンシャルの高いデータビジネスだが、今のところTwitter Japanの売上高全体に占める割合は1割にも満たない。9割以上は依然として広告ビジネスが占めているのだが、「データビジネスの成長率は広告ビジネスよりも高い」(笹本氏)。今後、データビジネスを伸ばせるかどうかが、勝機をつかむための一つのポイントになる。