今の仕事は安泰か?転職すべきか?

人工知能が一流の専門医を上回るとなれば、人間が人工知能に奪われる仕事の分野はかなり広範に及びそうだ。そこで出てくるのが「人工知能脅威論」。「人間の仕事がすべて奪われてしまうのではないか」「人工知能は人類滅亡の引き金になるのではないか」などといった悲観的なストーリーだ。

「人工知能は『便利なもの』『使いやすいもの』ですが、われわれ人間の仕事を大きく『破壊』するものでもあるのです。ただ、ここで言う破壊とは、物事をぶち壊すということではありません。既存のビジネスモデルが変わるという、ただそれだけのことです。

過去を振り返れば、農業改革や産業革命などにより、さまざまな旧来の分野で仕事をする人間の数は劇的に減り、同時にまた、新たな仕事が生まれました。数百年前の人は、IT技術者などという職業が生まれるとは、よもや思わなかったでしょう。それと同じことです。

表計算ソフトにデータを入力するだけといった“反復的な仕事”の多くは人工知能にとって代わられるでしょう。また、これはもう一部で行われていますが、金融・株式市場のマーケット動向やスポーツの試合の結果を伝えるだけのニュース記事なら、記者も必要ありません。人間が思いつく前に、人工知能によって記事が入力、書きかえられていきます。

反復的な仕事を人間から人工知能が奪うことは悪いことばかりではありません。今まで人間がやっていたことを人工知能がやれるなら、人件費が浮きます。つまり、人間にとって必要なものがどんどん安くなっていくのです。食料、住宅、輸送・交通、医療などが安くなるため、格差なく多くの人に行き渡ります。そうなってくると、いい生活をするためにたくさんのお金を稼ぐ必要がなくなるわけです。

さらに、人工知能の知性がもっと高まれば、弁護士、会計士、パイロットの仕事すら安泰とは言えません。

1997年、人工知能はチェスの世界チャンピオンに勝ちました。将棋は、2010年に勝利しました。確実に言えるのは、人工知能は初めに、反復作業で習得できるものについて成功を収めるということです」