半導体に泣いた三井金属・日立電線
2007年、34年ぶりに列島改造ブームピーク時を超える1億2020万トンの国内粗鋼生産量を記録した鉄鋼業界。好調な生産が続く自動車、高級鋼板の需要増に沸く造船、中国に牽引され活況を呈するアジア輸出などを背景に、この5年余りはわが世の春を謳歌してきた。しかし、世界経済の失速を受け鉄鋼需要は08年後半から激減。09年の鉄鋼業界は、減産と従業員一時帰休のニュース一色となった感がある。
減産に向け新日本製鉄は、君津製鉄所の高炉3基のうち1基の一時休止と、大分製鉄所の高炉改修前倒しを実施した。JFEスチールは西日本製鉄所の高炉1基を1月に止め、住友金属工業は高炉の稼働率を抑える「休風」措置などを講じた。神戸製鋼所は全社的に月1日の一時帰休を計画している。
肝心の業績だが、09年1~3月期の業績予想修正においては、鉄鋼大手5社全社が赤字。経常損失は、新日鉄が四半期ベースでは会社発足以来最低の504億円となったのをはじめ、JFEHD105億円、住友金属78億円、神戸製鋼334億円、日新製鋼152億円とほぼ全滅の格好だ。ただし、通期での大幅減益が目立つものの、それでも新日鉄1750億円、JFEHD1300億円、住友金属1000億円と、高炉大手は1000億円超の純利益を確保しており、余力はまだ十分に残している。
鉄鋼同様ここ数年好調だった素材産業も打撃を被った。非鉄・電線大手10社の08年4~12月期連結決算は6社が最終赤字となった。赤字額が大きいのは非鉄では三井金属。通期では350億円の赤字(前年は78億円の黒字)が見込まれており、9月末までに全従業員の2割の4000人の削減が計画されている。
電線では530億円の巨額赤字(前年は107億円の黒字)となった日立電線。TAB(半導体実装材料)に強い企業である。銅価格の急落と半導体・自動車市場の落ち込みで、5年ぶりの赤字転落。国内非正規従業員800人削減を柱とした構造改革に乗り出した。
※年収はいずれもユーレット(http://www.ullet.com/)のデータをもとに作成。純利益予想は3月25日時点の決算短信、業績予想の修正より。