■山田育子(仮名)44歳
【家族の人数】6人
【家族構成】夫(38歳)、長男(高1)、長女(小5)、次女(小1)、実母(79歳)
【世帯年収】620万円
【貯蓄】800万円
「夫の体が頼みの綱。動けなくなったら立ちゆかなくなるという、将来的な不安は常にありますね」
そう語る山田さんの夫は、自営の建築業。時に手伝いを頼むこともあるが、基本は自分一人で仕事を切り盛りする個人事業主だ。独立して10年、コツコツと信用を積み上げてきた努力が実って、贔屓にしてくれる顧客は増え続けている。その一方で、ほぼ休みなしで働きづめという夫の仕事ぶりは、不安材料でもある。体が資本の仕事だけに、病気やケガで仕事を休むことになれば、収入が一気に途絶えてしまうからだ。若いうちは多少の無理も利くだろうが、年を取ればそうもいかなくなる。そんな夫の苦労を金銭面で助けたくても、要介護の実母の世話に追われる山田さんは、今はパートに出かけることもできない状態だ。
だからこそ、家計管理には気を使っている。まずは保障。育ち盛りの子供が3人いるので、教育費がかさむのは目に見えている。そこで、万が一のための保険は可能な限り厚くした。夫婦の生命保険はもちろんのこと、学資保険を積み立て、自分名義の簡保はもうすぐ満期を迎える。
さらに、日常生活の中でも、少しでも貯蓄に回せるように、倹約に努めている。例えば、日用品は安売りの店に出向いて購入。子供たちの服はママ仲間からお下がりをもらうなどして融通し合う。電気製品などの大きな買い物では、ボーナスのない自営業なので、現金主義を徹底。一括で支払えるお金が貯まるまでは、買わずに我慢すると決めている。
「正直言って楽ではないし、苦労は多いですが、充実もしています。夫は仕事、私は介護や子育てを通じて、どちらがより頑張れるかって競争をしている感じ。負けられませんよ」
そう笑った山田さん。夫の休日が皆無に近いため、家族そろって出かけることは少ない。夏に友人の別荘を借りて数日過ごすのが唯一のファミリーバカンスだ。けれど、毎日の夕食は常に家族そろって卓を囲むようにしている。どこかへ出かけて遊ぶより、共に過ごす時間を楽しみたい。厳しい条件の中でも、家族が笑って過ごせるライフスタイルを、日常の工夫を通じて模索し続けている。