もし、出発の直前になってパスポートの期限切れが判明したらどうするべきか。これも一見、解決不能に見えますが、実は、知己の外務省キャリア官僚さえも知らなかった驚きのやり方があったのです。

通常、パスポートの発券には、7日から10日かかります。住んでいる場所が本当に合っているのか、「はがき」でのやりとりがあるために、時間がかかるのです。

そこで「緊急発券」という仕組みを利用します。「緊急発券」とは、たとえば、外国で家族が事故やアクシデントに見舞われ、緊急に海外へ行かなければならない事態になったときなどに、パスポートを即時発券できる仕組みです。

これを公務やビジネスについて応用するのです。外務省に上申書として、現地でのスケジュール表と会社の出張命令書を提出します。たとえば、海外で行われる製品発表の展示会のブースや、企業の研究開発の発表や研修の要項などもその際に添付するのがよいでしょう。

海外へ遊びに行くのではなく、オフィシャルな用事で出向く。もし自分が出席できなかったら、企業が損失を被るばかりか、ひいては国益を損じてしまう、ということを強調できるものがあれば、大きな助力となりうるでしょう。さらには、現地の主催者からの自分の名前の入った要請文があれば心強いです。どうしてもイベントの初日に間に合わなくてはいけない、と強くお願いをした例もあると聞きました。

最終的な判断は外務省で下されることになりますが、上申書が信頼に足るのか吟味されたうえで、パスポートは即発券されます。濫用は避けなくてはなりませんが、この仕組みで助かった人は少なからずいます。国益を守る意味でも、パスポートの発券をあきらめず、大いに海外で活躍していただきたいものです。

※プレジデント社新刊『小泉元総理秘書官が明かす 人生「裏ワザ」手帖』より転載。