有権者はマニフェストなど理解せず投票する
アベノミクス解散? 独りよがり解散? はたまた、安倍のみクスリ解散か?
大義なき解散とも言われる今回の総選挙の行方はどこへ向かうのか。メディアは票読みと議席予想に血眼になっている。だが、ある選挙区で「どの候補者が勝利するか」が、何も知らない子どもでさえも当てられるとしたら……。
通常、人は選挙で投票するとき、どんな基準で一票を投じる人物を決めるのか。多くは社会問題、経済問題に関する候補者の政策や、発言の明晰さ、リーダーシップなどを論理的に検討して選んでいるだろう。
ところが、米国にこんな研究がある。
2000年にジョージ・W・ブッシュとアル・ゴアが争った大統領選挙で、ふたりの候補者の方針に関して、12の項目を国民に質問した。「所得税の削減に賛成しているのはどちらか」「医療保険の拡充に賛成しているのはどちらか」といった内容だ。国民の正解率が高かったのは2問だけ、全問正解できた人は半分に満たなかったという。つまり、有権者は候補者たちのマニフェストなどあまり理解していなかったといえる。
さて、日本はこれに比べてマシだろうか。
私たちは新聞やテレビを眺めはするが、それで果たしてどれだけ候補者たちの政策を理解しているだろう。自民党はやっぱりけしからん、とか、民主党はだらしなくて頼れない、という程度の根拠で投票することも少なくないのではないだろうか。
社会情勢の知識がうろ覚えで、候補者の政策も心もとないとき、有権者はどうやって投票しているのか?
米国デポー大学の心理学者、ハーテンステイン博士はこう答える。
「そんなとき、私たちが頼るのはヒューリスティックスです。ヒューリスティックスとは、複雑な問題に対して、簡単で手っとり早い方法で決断すること。所属政党だけで投票先を決めるのもそうですし、候補者の顔立ちや身長などで決めるのもヒューリスティックスです。実際にそうした基準で投票されたとしか思えないデータが、アメリカの国政選挙には多々あります」
選挙に限らず、仕事でもプライベートでも、人が何かを意思決定するときに、理詰めで答えに迫るのではなく、直感に頼ることが多い。それがヒューリスティックだ。