孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 情報漏洩対策のため正社員を3倍にする必要
2004年2月、ヤフーBB登録者の約450万人分の個人情報が漏洩するという事件が起きた。派遣社員が犯行に関与していたことから、ソフトバンクは社内の個人情報管理を徹底させるため、正社員の採用を急いだ。A案は、スピード重視。B案は、コスト重視。【A】一気に現社員の2倍の人数を採用【B】徐々に正社員を増やす
(正答率50%)
社員採用に関する選択問題です。
その事業はまだ立ち上がっていません。これからどうなるかもわからない。会社の財政は大赤字です。やめてしまうかもしれない事業のために、大量の正社員を採用してもいいのか――。
そんな不透明な状況では、通常、パートタイマーやアルバイト、派遣スタッフなどの非正規社員の起用でリスクを小さくすることを考えるでしょう。
それでも踏み切らねばならない。顧客情報を守らなければならない。僕はそう思ったのです。
顧客情報漏洩事件の発端は、当時、働いていた派遣社員がリストを外部に持ち出したことからでした。非正規社員はロイヤルティが低いのだろうか。そう感じずにはいられなかった。
急拡大中のブロードバンド事業をさらに軌道に乗せるためには、ロイヤルティの高い正社員を一気に集めて、絶対に顧客情報を漏洩させないようにする必要がある。我々のリスクは高まりますが、猛反省をして一気にシフトする。その必要性を感じました。
ブロードバンド事業を受け持つヤフーBBの社員数は、04年の頃で1700人でした。ところが、我々は05年度に3000人の新卒採用を計画しました。メディアは大騒ぎになりました。現役社員の総数の2倍近い社員を新卒で集めるというのですから、まさに前代未聞。クレイジーです。しかもやめてしまうかもしれない大赤字の事業です。ソフトバンク創業以来、最大の新卒採用でした。ちなみに前年度の新卒採用実績は125人でした。