企業から役所まで日本の組織で一番問題なのは「仕事に対する忠実性」だと私は考えています。
「会社のため」と「仕事のため」という2つの基準が背反した場合、ぎりぎりのところで「会社のため」のほうを選ぶ人がほとんどでしょう。仕事に忠実であれば、当然選ぶべき道があるのに、会社や組織にとってマイナスにならない別の道を選んでしまう。時にはそれが反倫理的、反社会的である恐れもあります。
会社の利益のために偽装する、会社が潰れることになりそうな不祥事は隠蔽してしまう。そのほうが共同体の内側では利害が一致して、みんな仲良く団結して気持ち良く働けるからです。局所的合理性が全体的合理性に反することになります。
仕事自体に忠実であろうとすれば、自分が属する共同体の利害とぶつかってしまう。そういう場合にどう行動するか。共同体の内側からだけ見ていると壁の外側の世界が見えません。しかし外側に出てしまえば、内側の一員ではいられない。
だから、会社で生きる人間にとって今後いっそう大切なのは、内だけでもなく外でもない、壁の上に立った視点を持つことでしょう。
一方、昨今の職場では能力主義ということが盛んに言われています。それには、そもそも能力が測れるのか、人を見る目がある人間がいるのかという疑問があります。
状況が変わらぬという前提なら、能力は測れるかもしれない。しかし状況が変われば、能力を測る物差しも変わります。すると、とんでもない人が役立つ可能性があるんです。