価値創造を促す凸凹人材が集ったフラットな職場

「障がい者も健常者も、一人ひとりは同じ人間です。その障がい者と健常者が同じ職場でフラットに働けるようにするのが、『世の中をよく治めて、民の苦しみを済すくうこと』を意味する『経済』の本来の役割でもあるはず。そう考えると、私がしていることは特別なことではありません。そのことを多くのビジネスパーソンの方々に知っていただきたく、筆を執りました」

夏目浩次さんが立ち上げた久遠チョコレートの従業員はおよそ700人。そこで働く仲間の約95%はお菓子作りの未経験者で、身体や心や発達に障がいのある人たちが全体のおよそ6割を占める。引きこもり経験者もいれば、子育て中や介護中でフルに働けない人もいる。「凸凹人材」が集ったフラットな職場なのだ。

夏目浩次 久遠チョコレート代表
夏目浩次(なつめ・ひろつぐ)
久遠チョコレート代表。1977年、愛知県生まれ。大学・大学院でバリアフリー都市計画を学ぶ。2003年、豊橋市で「花園パン工房ラ・パルカ」開業。14年久遠チョコレートを立ち上げる。「凸凹ある誰もが活躍し、稼げる社会」が目標。

「よく『大変では』だとか、『感動を得ることが多いのでは』と尋ねられます。でも、当たり前のことをしているだけなので、そうした意識は芽生えません。むしろ同じ職場の仲間として、『どうしたら一緒に楽しく働けるか』と逆算思考を巡らすことで、創意工夫が続々と生まれてきます。看板商品の『QUONテリーヌ』もそうして誕生しました」

久遠チョコレートの職場では、「心のイノベーション」が毎日巻き起こっている。そのことが、わずか10年間で全国60拠点に拡大という急成長の原動力になってきた。「SDGs」「ダイバーシティ」などを声高に叫んだりしなくても、凸凹人材が当たり前のように集い、そして一緒に働くことで、日本社会全体に新しい価値が生まれてくることを、本書は教えてくれる。

「当面の目標は、国内の100ブランド以上が期間売上高を競うバレンタイン催事『アムール・デュ・ショコラ』でトップになり、一流ブランドとしてのポジションを固めることです」と夏目さんは言う。その躍進に期待したい。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

(文=伊藤博之 撮影=石橋素幸)

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