誰も「お礼状」を書いていなかった
もちろん、「ラッキー!」とばかりに自分の業績にしてしまう人もいますよ。そういう取り合いみたいな世界でもありました(笑)。みんな業績を上げて時給を上げたいですから。でも、こういう名刺を渡してひと言添える、みたいなことが出来ない人は意外と多いんですね。
エアコンに冷蔵庫にあれもこれもまとめて、と一度にたくさん買ってくれる、自分が以前買ってよかったから、「娘が今度これを買うんだけど」と家族を連れてきてくれる――。そういうお得意様には、必ずハガキでお礼状を書いていました。
電話でもよかったのかもしれませんが、「書きたいな」と思ったんですよ。他に誰もやっていなかったし、私もみんなの前でこれ見よがしにやっていたのでもありません。
でも、今振り返ると、車や住宅、保険業界ならともかく、家電量販店でお客様にお礼状を書く人はほとんどいなかったと思います。そのハガキで喜ばれたり感心されたりしたことはありましたが、怒られたことは一度もなかったです。
子どもの頃から親の転勤、転勤で居場所がコロコロ変わっていたものですから、その場、その場で瞬間的に人となじむ、早い段階で関係性をグッと深める方法が、たぶん身体に沁みついていたのだと思います。
接客業の極意
子どもの頃から「いかに好かれるか」というよりも、「いかに嫌われないか」という意識のほうがすごく強かったかもしれません。嫌われないことをしていればだいたい好かれていく。それがだんだんわかってきました。
ですから、接客の際も大事なのはああしよう、こうしようっていうよりも、余計なことはしない、違和感をいかにつくらないか、ということだと思っていました。お客様が店員さんに抱く感情は、普通に何も思わないか、「えっ.」「ちょっと嫌だな」というマイナスの違和感のどちらか。
接客だけで「おー! すごい接客だ!」って感動することはまずありませんから。加点するより減点させないという接客スタイルでした。
当たり前ですけど、自分がされたら嫌なことはしない。例えば、相手の目を見ないで接客する店員や、スペックの話ばかりする店員、高いものを買ってくれそうなお客様にばかり接近する店員は少なくありません。そういう販売員って、自分が逆にお客様の立場だったらすごく嫌です。変な違和感しかありません。

