どうすれば満足いく最期を迎えられるのか。『定年後、その後』(プレジデント社)を書いた著述家の楠木新さんは「普段は深く考えていないが、私たちは自分が『いつか死ぬこと』を知っている。そこに隠された大きな意味を知ることが大事なのではないか」という――。(第2回/全3回)

火葬は「8日待ち」、孤立死は年2万人超

日本人の死者数は2024年に約160万5000人に達し、1989年の約78万8000人から35年でほぼ倍増した。団塊の世代は2025年に全員が75歳以上となり、これから平均寿命に近づいていく。

報道によれば、東京都内では亡くなる人の多い冬場、火葬まで平均8日以上待つこともあるという。より深刻なのは、支え手のないまま亡くなる人の増加だ。65歳以上のいる世帯のうち単身世帯は32.7%(2024年)で、夫婦のみの世帯を上回っている。

死後8日以上たって自宅で見つかる「孤立死」は2025年に約2万2000人と推計されている。もっとも、こうした数字は、いわば見知らぬ人の死の統計である。では「私の死」はどうなのだろうか。

書類に記入をする医師の手元
写真=iStock.com/FG Trade
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人間とそれ以外の生き物を分けるもの

先日参加した、死を疑似体験するワークショップ。そのメインワークの前に行われた「自分の死亡診断書を書く」という作業が、私にはとりわけ印象深かった。

作家の椎名誠さんは、「人間とそれ以外の生物との決定的な違いは何か」という難問に突き当たり、「人間は自分がいつか死ぬことを知っているが、他の生物はそれを知らない」という答えに行き着いたそうだ。

きくちゆうきさんの『100日後に死ぬワニ』が多くの読者を集めたのも、ワニ自身は知らない自らの死を、読者だけが知っているというギャップに心を揺さぶられたからだろう。

人は死ぬことの恐怖や、大切な人と別れる悲しみを和らげるために、死後の世界やあの世を想像してきたのかもしれない。

私たちは自分が「いつか死ぬこと」を知っている。しかし普段は、それを深くは考えていない。そこに自身の死亡診断書を書くワークの意味があるのではないか。

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