近年、日本に訪れた急速な「高齢化」。普段日本で暮らしていると、その事実を意識する事はあまりないが、世界的に見ると日本の高齢化は非常に稀有な例のようだ。
それを表すのが、各国の高齢化率の推移。たとえば高齢化の先進国とされるスウェーデンの場合、国民の高齢化率が12%台となったのは1960年代(※1)。これが23%台まで上がるのは、そこから70年経った2030年代だと考えられている。一方、日本は1990年代に12%台(※2)となったが、それからたった20年で23%台(※3)へ突入し、世界に先駆け「超高齢社会」を迎えた。これにより日本は、課題先進国として超高齢社会のモデルづくりに挑戦することになった。
その日本の介護モデルに注目しているのが、近隣のアジア諸国だ。日本の介護は今、アジア地域における介護のロールモデルになりつつある。
福祉機器の顧客は、近10年で10倍以上に
内閣府の「高齢化白書」によると、2010年に23.1%となった日本の高齢化率は、2015年に26.8%、2025年には30.3%まで増えると考えられている。こういった見通しの中で「多くの産業がシニアマーケットに目を向けている」と語るのは、介護業界の人材支援プロジェクト「HELPMAN!JAPAN」を担当する、リクルートの永田隆太氏だ。
「私たちは超高齢社会は内需産業を育てる機会でもあると捉えています。高齢化した社会では、すべての産業で高齢者に配慮した商品やサービスの開発が必須となります。北欧などの福祉先進国は、それを長年かけてじっくり作ってきました。しかし日本は特殊で、20年での急速な対応が必要となりました。その中で生まれつつあるのが、『日本型』の介護です」
介護に関わる領域には、介護施設から介護制度、介護福祉サービスや車イス、電動ベッドといった福祉機器などあらゆるものが含まれる。その中でも、日本で特に発達したのは福祉機器だという。
「介護保険制度が出来てから、国内の福祉機器の開発は飛躍的に進歩しました。結果、福祉機器の顧客は、10年で10倍以上に増加した、と言われています(※4)。日本は技術力が高いこともあり、この分野は『福祉先進国』である北欧に発信できる力を持っていると考えています」(同)
それを裏付けるように、2月1日にISO(国際標準化機構)に採択された生活支援ロボットの安全性に関する国際標準化規格は、日本の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」が提供したデータ等が多いに貢献したという。
「日本の技術が信頼されているからこそ、この規格化において日本の方式が採用されたのだと思います。もちろんそれは、今後の介護関連のロボット開発競争において、日本がイニシアティブを取っていく可能性も十分にあるでしょう」(同)
※1 UN「World Population Prospects:The 2010 Revision」
※2 総務省統計局「国勢調査」
※3 内閣府「高齢社会白書(平成23年版および24年版)」
※4 ヘルプマンジャパンP270 より引用