わずか2%の水分を失うだけで不調に
また、水分が胃腸から吸収されて血液に届くまでには、およそ1時間かかります。「のどが渇いたから一気に飲めば大丈夫」では、補給が実際の必要に間に合いません。のどが渇く前に、少量ずつこまめに。冷やしすぎず、常温に近い温度のほうが吸収は良くなります。
食事も侮れません。のど越しがいいからとそうめんなどの麺類ばかり食べていると、炭水化物と塩分に栄養が偏り、血液が濃くなって「隠れ脱水」を招きやすくなります。つゆにシークワーサーを絞る、中鎖脂肪酸のオイルを一滴垂らすなど、いつもの食事にひと工夫を加えるとよいでしょう。
ここまで挙げた3つの行動に共通するのは、脱水が「自覚のないまま」進んでしまうことです。熱中症には、強い日差しの中で突然倒れるような激しいイメージがありますが、その手前には必ず、水分や塩分が減っているのに本人が気づけていない段階があります。これを「かくれ熱中症(隠れ脱水)」と呼びます。
身体は、わずか2%の水分を失うだけでだるさなどの不調が現れ始めます。そして「のどが渇いた」と感じた時点で、脱水はすでに始まっているのです。とりわけ、渇きを感じるセンサーが鈍くなる高齢者や、遊びに夢中になって渇きを忘れる子どもは、自覚が追いつきません。
「自分はまだ若い」という人ほど危険
だからこそ、本人の訴えを待たず、周囲が気づいてあげることが大切です。口の中の乾き、なんとなくのだるさ、立ちくらみ、尿の回数が減る・色が濃くなるといった変化は、いずれも身体からの危険信号です。見逃さず、渇きを覚える前にこまめに水分を補ってください。「本当の勝負は前日から」という話は、この見えない脱水を早く断つことでもあるのです。
この3つは、高齢者だけの話ではありません。むしろ若い世代こそ注意が必要です。
先ほどの建築現場の調査では、若い作業員が体力を過信して休憩をおろそかにし、頭痛などの症状を経験しがちであることが報告されています(角田ほか,2024)。深酒の翌朝、寝不足のまま、「自分は若いから平気だ」と炎天下に出ていく――ワースト3が3つとも重なりやすいのが、じつは若い世代なのです。一方で、高齢になると発汗の機能や心臓・血管の予備力が低下し、暑さへの弱さが増していきます。年代を問わず、前日からの備えが問われるということです。老化した血管細胞のほうが、若い血管細胞よりも熱に脆弱であることも、私たちの研究でも明らかとなっています。
