熱中症は炎天下の屋外で起こるというイメージは根強い。だが、長年、熱中症研究を続けてきた東洋大学教授の加藤和則さんは「発症者のおよそ4割は屋内で倒れている。しかも、日が傾いた夕方こそ、部屋が見えないストーブに変わる危険性が高まる」という――。

※本稿は、加藤和則『血管細胞を強くすれば熱中症は予防できる─熱中症やヒートショックに強い身体に変える3つの成分─』(プレジデント社)の一部を再編集し、公的機関・学術論文の知見を加えて構成したものです。

晴れた日に扇風機の近くで眠る男性
写真=iStock.com/ArtMarie
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発症者の4割は「屋内」で倒れている

「熱中症は炎天下の屋外で起こるもの」というイメージは、根強くあります。しかし実際には、発症者の約4割は屋内で倒れています。年代別に見ると、高齢者が全体の半数以上を占めています。

この傾向は、公的なデータからも裏づけられています。東京都の高齢者を対象に熱中症の発生を分析した研究では、高齢者の発症場所は住宅が約6割と際立って高く、日常生活のなかで起こる、いわゆる「古典的熱中症」が多いことが示されています(松本、2022)。日本生気象学会も、一般の生活環境における熱中症の死亡事故がむしろ多いことを指摘しています(渡邊ほか、2023)。

つまり、屋内はけっして安全地帯ではないのです。とりわけ、活動量の少ない高齢者が、節約や習慣からエアコンをつけずに過ごし、自宅で知らないうちに熱中症になってしまうケースは、少なくないのです。

高齢者は「暑さを感じにくい」理由

問題は、高齢になるほど「暑さを感じにくくなる」という生理的な変化が起きることです。暑いと感じて自分でエアコンをつける、というごく当たり前の行動そのものが、加齢とともに起きにくくなっていきます。

これは、気のせいや我慢強さの問題ではありません。皮膚には温度を感じ取るセンサー(温度受容器)が備わっていますが、その感度は加齢とともに低下していきます。

さらに、その情報を受け取る脳の視床下部(体温調節の中枢)の反応も鈍くなり、暑いと感じて汗をかけ・血管を広げよという指令が出るまでに時間がかかり、その働きも弱まります。その結果、実際には身体が危険な高温にさらされていても「暑い」という自覚が遅れ、汗をかき始める体温の目盛りそのものも高いほうへずれてしまうのです。

汗の機能も同じです。発汗の能力は20代から30代にかけてすでに少しずつ低下し始め、その後も年齢とともに下がっていくことが報告されています(角田ほか、2024)。体温を下げる仕組みが静かに衰えているのに、本人にはその自覚がない。ここに、屋内熱中症の落とし穴があります。