冬眠中の1~2月、1~3頭を出産する

遅い個体でも、通常は12月下旬には冬眠に入る。そしてメス成獣は1月下旬から2月上旬頃に冬眠穴の中で出産する(※坪田 2011)。一回の出産で産む子グマの数(一腹産子数)は、1~3頭である。

※坪田敏男(2011) クマの生物学―クマという生きもの.In:日本のクマ ヒグマとツキノワグマの生物学.(坪田敏男・山﨑晃司 編)pp.1-34.東京大学出版会.

知床国立公園内に生息するメス成獣34頭の繁殖状況を長期間追跡した結果では、一腹産子数はやはり1~3頭で、平均が1.78頭、平均初産齢は5.3歳(もっとも早熟な個体で満4歳)、平均繁殖間隔が2.4年(1~4年周期)、4歳以上のメスが1年に産む子の平均(繁殖率)が0.64頭/年などのデータが示されている(環境研究総合推進費 JPMEERF20194005)。

このような繁殖に関連するデータを生存率のデータと共に蓄積することによって、ヒグマの個体群が増加する能力がどのくらいあるのかということが推定可能になる。

人慣れしていなくても人里に来る

なお北海道では現在、1991~2020年の道南の渡島おしま半島における個体数推定値から算出した9.2パーセントという推定増加率を全道のヒグマに対して適用して、ヒグマと人とのあつれきを低減するための「捕獲目標数」を算出している(北海道環境生活部のホームページ掲載資料)。

9.2パーセントは、8年で個体数が倍増するポテンシャルを示唆する数字である。

一方、2012年や2015年の大量出没・大量捕殺の後、感覚的には4~5年でヒグマの生息状況が元に戻ったように私は感じた。この現場での直感がもし正しければ、当時の知床半島のヒグマの増加率は9.2パーセントよりもう少し高かった可能性も考えられる。

石名坂豪『熊害(ゆうがい):獣医師ハンターが見たリアル』(NHK出版新書)
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ちなみに関係閣僚会議が2026年3月27日に公表した「クマ被害対策ロードマップ」において、本州のツキノワグマの暫定ざんてい的な捕獲目標数を定めるための根拠となった自然増加率は、14.5パーセントに設定されている。これは5年で個体数がほぼ倍増するポテンシャルを有することを示唆している。

多少あちこちへ脱線してしまったが、こうして一年を見渡すとヒグマの行動は、季節ごとの食物さがしと繁殖活動に強く影響されていることがわかる。


「人なれ」の影響が少ない状態であっても、食物さがしと繁殖活動の過程でヒグマが人里へ接近してしまうことは十分に起こりうる。人間側のリスク管理も、このようなヒグマの行動原理を念頭に置きながら考えていく必要がある。

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