「レフリングの癖」を見抜くのもまたアスリートの仕事

現役時代を思い起こせば、レフリーの癖を把握することも試合前の準備の一つだった。レフリーによっては、オフサイドの基準などボールを争奪する局面での解釈が微妙に違う。それに合わせるようにプレーしなければ、パフォーマンスは発揮できない。それをミーティングを通じてチーム内で共有していた。

試合会場がアウェイかホームかも、レフリングに影響する。いわずもがな、大勢のファンが詰めかけるホームチームに有利な笛が吹かれる傾向がある。だからアウェイでの試合で、もし不可解な判定が下されても感情を波立たせないように努めなければならなかった。冷静さを失えば勝てる試合も勝てなくなるからだ。

このホームとアウェイのレフリングの差は、海外遠征では顕著だった。タッチラインを踏んでいないのに踏んだとしてトライを取り消されたり、モールでのトライはほとんど認められなかった。当時はフェアに笛を吹いてくれと切望していたが、いまとなればそれもよき思い出になっている。アウェイの洗礼を浴びつつ、それでも試合に勝ったときの達成感はいまでも忘れない。

忘れられない「ロスタイムの逆転トライ」

反対に、誤審の恩恵を受けたこともある。

2000~2001シーズンの社会人選手権大会の準決勝で、ロスタイムでの逆転トライを決めた私は、その瞬間、ボールのコントロールを失った。手からするりと抜けたボールを、地面に落ちる前に持ち直してグラウディングしたことでトライが認められたのだが、あとから映像を見返すとそれがバッチリ映っていた。

もしTMOが採用されていれば、間違いなくトライは取り消されたはずだ。のちに対戦相手のサントリーの選手から、あれはノックオン(現在はノックフォワード)だったと総スカンを喰らった。いまでもうしろめたい気持ちを引きずっているが、当時の選手たちと会えばその話題で盛り上がる。申し訳なさと気恥ずかしさがともなうこの経験は、この先もずっと忘れないだろう。