ビデオ判定が増えるほどスポーツの楽しみが損なわれている

私が専門とするラグビーでも、同じような引っ掛かりを覚える。

ラグビーのビデオ判定「TMO(Television Match Official)」は、先の「リクエスト制度」や「チャレンジシステム」とは異なり、チームからは要求できずレフリーの判断で行われる。

2026年6月7日、TMOが初めてリモートで行われた(MUFGスタジアム)
2026年6月7日、TMOが初めてリモートで行われた(MUFGスタジアム)(写真=Bowwow/CC0/Wikimedia Commons)

頭部へのタックルなどの危険なプレーや得点に繋がるシーンのみに適用され、スタジアムのスクリーンに繰り返し映し出された映像をレフリーがチェックして判定を下す。いくつもの角度から撮られた映像を繰り返し流すので、判定に至るまでには数分間を要する。この「間」が、どうにも受け入れ難い。モメンタム(流れや勢い)が断絶されることによって、幾分か興醒めしてしまう。

一度トライが宣告されながらTMOによってそれが覆されることもある。すると数分前によろこび、昂った感情は水泡に帰す。ぬかよろこびに終わるわけである。まるで肩透かしを喰らったようなあの感じもまた、興醒めを誘う。TMOの回数が増えるほど、ラグビー本来の楽しみが損なわれる気がしてならない。

ビデオ判定の介入を減らす試み

こう考えるのはなにも私だけではない。たびたび試合が中断する事態を避けるために、WR(国際統括団体ワールドラグビー)はTMOの介入および迅速化のプロトコルを見直している。WRもまた、TMOがラグビーの醍醐味を毀損していると考えている。

同じゴール型競技のサッカーでも、これと似た動きがある。VAR(Video Assistant Referee)の介入時間や頻度を減らすべく、新技術である「SAOT(半自動オフサイドテクノロジー)」の導入や、明確な誤審が疑われる場面に限定するなど介入基準の厳格化を試みている。

両競技ともに、ビデオ判定がもたらす「間延び」を回避すべく舵を切ったのである。