デジタル依存で発達の異常と不調が増える
自然から離れる一方で、現代の老若男女が時間を費やすのは、スマートフォンやゲームです。近年の脳科学研究は、こうしたデジタル依存が、脳、とりわけ前頭葉の発達や機能に影響を与えることを明らかにしています。
前頭葉は「人間らしさ」を形づくる領域であり、計画性、抑制力、創造性といった実行機能を担います。オンラインゲームに依存している思春期の脳においては、前頭前野や眼窩前頭皮質の皮質厚が減少し、実行機能の低下が観察されています(※5)。
また、前頭葉同士の機能的なつながりが弱まり、注意制御や意思決定が困難になることも報告されています(※6)。
自然にあまり触れず、屋内でスマホやパソコンに触る時間が増えることで、精神的、身体的問題を抱えやすくなります。つまり、自然と触れ合う時間が奪われる一方で、デジタル依存が前頭葉の働きを弱めるという、二重のリスクが現代の子どもたちを取り囲んでいるのです。
自然欠乏症候群では、注意力の低下、攻撃レベルの上昇などの問題行動の増加、ストレス耐性の低下、抑うつ傾向、幸福度の低下、慢性的な不眠、疲労倦怠感、肥満の増加など、さまざまな精神的、身体的不調・疾患の発生率が増加し、また成績の低下など学習機能や作業能率にも影響を与えることが指摘されています。
これを「発達障害」と片付けて、投薬をすると、問題の本質を見失います。
自然を十分に理解しないまま大人になる代償
自然は、身体を通じて脳を育む最良の学びの場でした。土を掘り、虫を捕まえ、木登りをする。こうした行為のなかで、子どもは全身の感覚を統合し、前頭葉を鍛えてきました。
しかし、自然と十分に触れ合い、前向きな経験をして、その重要性を十分に理解しないままに大人になると、自然を保護する必要性を感じにくくなり、環境課題への解決意欲も低下します。
成人世代でも自然と十分に触れ合っていない世代が増えており、これが現代の環境課題への意識の低さにもつながっていると考えられます。
家でゲームをしたり、動画を観ることが日常になり、友だちとのコミュニケーションもオンラインゲーム上で、という子どもも増えています。他者を気遣ったり、感情を読み取ったりすることも苦手になり、人間関係をうまく構築できない子どもや若者が増加しています。
※5 Behav Brain Funct. 2013 Mar 12; 9:11. doi: 10.1186/1744-9081-9-11 (*10)Front. Behav. Neurosci., 03 November 2015. Volume 9. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2015.00296
※6 「小中学生のスマホ所有率上昇 調査開始から初めて小学校高学年で4割を超す」モバイル社会研究所白書 2023年版(2024年1月29日) https://www.moba-ken.jp/project/children/kodomo20240129.html

