トリプルチェックでも防ぎきれない
私が以前かかわった、ミスに極めて厳しい企業では、「ミスが起きるたびに手順を追加する」というルールが徹底されていました。その運用を10年以上続けてきた結果、手順書は膨大な量になり、ダブルチェックはもちろん、トリプルチェックも当たり前。本来なら1つの工程で終わる作業が、事前・事後の確認を含めると10以上の工程へと膨れ上がっていました。それでも、ミスはゼロにはならなかったのです。
なぜミスはなくならないのか。それは、人の手に依存している限り、ミスは必ず発生するものだからです。人の行動の信頼性は、単純作業で0.1%、少し複雑になると1%程度損なわれると言われています。つまり、一般的な業務では、100回に1回は間違える計算になります。
たとえば、もし80ステップの作業で1回ミスが起きたからといって、100ステップの手順に増やすとどうなるでしょうか。答えは明白です。結局、どこかで1回ミスしてしまいます。統計的にはミスの確率はほとんど変わりません。つまり、「ミスを減らすために手順を増やす」という発想そのものに限界があるということなのです。
「人は必ずミスをする」前提に変える
ここで大事なのは、「ミスが起きない仕組みに変えること」です。
毎日、目覚ましのアラームをセットしているのに、ある日、忘れてしまったということがあるでしょう。このとき、「寝る前にアラームがセットされているか確認する」「朝、家を出る前に翌日のアラームをセットする」といった対策は、人の行動に頼る発想です。
仕組みでミスを防ぐ人は、定期アラームを設定します。さらに、朝寝ぼけてアラームを止めてしまうことを想定して、5分後にもセットしておく。つまり、毎回の手間を手放し、仕組みに任せるのです。このように設計すれば、毎日の意識や努力に頼らず、ミスが起きない状態を作ることができます。
手順を増やす人は、「ミスは努力で防げる」と信じています。一方で、仕組みを作る人は、「人は必ずミスする」ことを前提に考えます。ミスを減らす本質は、注意力や丁寧さではありません。「ミスが起きる余地を消すこと」にあるのです。

