日本人からむしり取るしかない
「いまでは日本人より、この国に住んでいる中国や東南アジアの人間のほうがずっと金持ちなんだから、外国人から税金を取ればいいんですよ」佐藤の愚痴は止まらなかった。
「それなのに政府は弱腰で、アメリカや中国から“外国人差別”と批判されることを恐れて、好き放題させている。そのため私のようなまっとうな日本人が、ちょっとカネをもっているというだけで差別されるんです」
同じような悩みは、別のビルオーナーからも聞いていた。有権者は圧倒的に貧乏人が多いので、日本国の財政を維持するには、数少ない日本人の金持ちからむしり取るしかないのだ。
そんな話を聞いていると、この国でゆたかになることになんの意味があるのか疑問に思えてくる。日本人はむかしから、自分以外の者がよい思いをするのが許せず、それなら全員が貧乏になったほうがマシだと思っている。このムラ社会では、目立たないように生きていくのがいちばんなのだろう。
歌舞伎町の大麻特区
帰りの電車までしばらく時間があったので、ひさしぶりに歌舞伎町まで足を延ばすことにした。
外国人観光客が昼から楽しそうに立ち飲みしている思い出横丁から大ガードを抜け、歌舞伎町一番街に入ると、緑の葉っぱのマークを掲げた店が並んでいる。
観光振興でなりふりかまっていられなくなったために、何年か前にこの一帯が「大麻特区」になったのだ。その効果は歴然で、中国や韓国、台湾のような薬物にきびしい国から若者たちが大挙して押し寄せた。
路上での喫煙は禁じられているが、道路に面したオープンカフェの店もあり、あたりには独特の甘い香りが漂っている。喫煙年齢が18歳に引き下げられたことで、制服姿の女子高生が外国人と一緒に大麻を吸っていた。
ゴジラヘッドのあるビルの周辺は、いまではアジア最大の風俗エリアで、男でも女でも、あるいはゲイやレズビアン、トランスジェンダーでも、あらゆる欲望がかなう店が集まっている。
高層ビルに挟まれたシネシティ広場の前では、コスプレをした女子高生や家出少女たちが未成年でも遊べるコンセプトカフェの呼び込みをしていて、ここも外国人観光客に人気の撮影スポットになっていた。
