ライバルは東急田園都市線や小田急線の沿線
広告掲出にあたっては、流山市に移住したいと考えるメインターゲットであるDEWKS層がどこに多く存在しているかについても分析しました。その結果、「流山市のライバルは東急田園都市線や小田急線の沿線だ」という結論に至りました。
ただ、当時こうした話をすると笑われることも少なくありませんでした。なぜなら、近隣市間との転入・転出が多かったからです。これはハフモデルによって移動量については周知の事実です。流山市は人の属性に重点を置き、広告のリーチモデルを東京西・南部に狙いを定めました。
マーケティング課設立(2004年)から10年目に、田園都市線および相互乗り入れしている東京メトロ半蔵門線の車内に、「母になるなら、流山市。」のキャッチコピーを掲げた広告を掲出しました。そのモデルになったのは、実際に横浜市青葉区から流山市へ移住された家族です。
広告には、「私は横浜市青葉区から流山市に引っ越しました」という一文も添えました。当時の両線の利用者からすれば、無名の流山市のその内容に驚かれたかもしれません。
数年後、東急電鉄と横浜市の職員約二十名が、流山市に視察に来られました。
メディアが取り上げる市のPR戦略
こうした取り組みを重ねた結果、次第に私たちが広告を出さずとも、メディアの側から取材依頼が来るようになっていきました。
最初に秋葉原に出した駅前送迎保育ステーションの広告は、メディアの注目を集めるまでには至りませんでした。ところが「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」というコピーを使った広告を出した際には、新聞各社やマーケティング専門誌が取り上げ(図表3)、結果として1億数千万円分の広告効果を生むことになりました。
初期の頃は「『子育てをするなら、流山市。』って良いコピーですね」と言われることがあり、「いや、『母になるなら、流山市。』『父になるなら、流山市。』です」との都度訂正していたのを思い出します。やがて正確に記憶してくださる方も増え、認知度が着実に上がっていくのを感じました。
私が市長に就任した頃は、冗談で「流山市の名前は、事故か事件でしか報道されない」と言われたこともありましたが、今では、全国はもとより、海外からの取材や視察が増え、外国の政治家や行政関係者、研究者も訪れるまちになりました。
メディアが取り上げた理由のひとつには、自治体が広告を通じてメッセージを発信すること自体が珍しかったという背景もあると思います。
しかしそれ以上に、「誰に選ばれたいまちなのか」という根本から戦略を立てて、明確なマーケティングを実行し、人口増加、子どもの増加という成果に注目したからとのことでした。


