40代から始まる脳の変化

人間がデジタルツールを使うようになってからの歴史は、人類史の中で一瞬ぐらいの時間しかない。親子の料理の記事で火の力について触れたが、代を重ねた人間全体として経験した量の違いなのだろうか。それとも、画面上の情報は存在すると脳が認識しないのだろうか。

また、何度も同じページに戻って確認しやすい、全体を一覧できる意味でも、紙のレシピの優位性は高い。ぜひレシピ本をストックし、掲載されたレシピを覚えることに挑戦して欲しい。

キッチンで料理本を確認しながら作業する女性の手元
写真=iStock.com/Motortion
※写真はイメージです

また、編み物などを始める場合も、紙の本を購入し、確認しながら新しい作品を作っていくことが、結果的に脳を鍛えることにつながる。上達していく手応えや、完成品を使う、あるいは食べる楽しみも生活を豊かにするのではないか。

老化や認知症の心配をするのは中高年が多そうだが、若い人にも認知症は関係がある。川島教授は、「アルツハイマー症につながる脳の変化は、40歳を超したあたりから始まります。20代、30代からしっかり脳の手入れをしておかないと、やがて自分の身に降りかかってきますよ」と補足する。脳の手入れとは、紙で情報を読む、人に聞く、ゴールを決めて作業する、新しいレシピに挑戦するといった、脳に負荷をかけつつ家事に取り組むことを含む。

家事はクリエイティブ力を育てる

「家事をしっかりやっていただくことは、心身の維持向上につながることが、科学的にはかなりわかってきています。家事全般が、さまざまなクリエイティブな能力を保持できるので、人生すべての期間において、家事は脳に対して有効に働くことをわかっていただいたらいいと思います」と川島教授は語る。

結局、ラクをすることは、人の能力を衰えさせてしまうのだろう。無理をしないでゆっくり、あるいは手間をかけないで作業するのではなく、少し背伸びするぐらいのつもりで速く作業する、少し難しい作業に挑戦することが、脳を鍛える。そしてその後に休む。

家事の能力が高まれば手応えや達成感を得られるし、同居する家族がいれば喜んでくれるかもしれない。誰かの役に立てることは、人の助けを必要とする場面が増えた人ほどやりがいにも結びつくだろう。

挑戦することは、生涯にわたり人を育て、その手応えがウェルビーイングにつながるのである。

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