「太閤記」「黄金の日々」高橋幸治さんの信長はカッコよかった
ここにはない「天と地と」(1969年)は杉良太郎さんが信長役。ただ、石坂浩二さんの上杉謙信と高橋幸治さんの武田信玄がメインのドラマなので本能寺はなし。2人が死んだ時点で信長はまだ生きてましたからね。「武田信玄」(1988年)の石橋凌さんもおんなじです。
高橋幸治さんが「太閤記」の信長役で本能寺を迎えたのは10月。ずいぶんと遅い感じですけどこれ、「信長を殺さないで」っていう声がNHKにいっぱい寄せられたからなんだそうです。
ボクが観たのは高橋幸治&緒形拳の2度目の信長・秀吉コンビだった「黄金の日日」のほうですけど。いやカッコいいんですよ、高橋さんの信長。馬の上とかでちょっとこう、黙ってアゴを少し上げ気味にして傲然と周りを見下してる様に、威厳と気品と怖さがありました。
「江」は上野樹里さんの主人公・江が信長の姪っ子、お市の方の娘ですから、トヨエツさんの信長が死ぬ時期は2月と早いですね。「真田丸」も信長と真田信繁は世代が違いますから。逆に「信長」と「麒麟がくる」は主人公がそれぞれ信長と光秀ですから、最終話が本能寺でした。
「麒麟」は沢尻エリカさん逮捕で撮り直すわ、コロナ禍で撮影が中断するわ、東京五輪でお休みになるわで翌年2月まで持ち越しましたね。「豊臣兄弟!」も秀吉・秀長の一生が軸だから、やっぱり本能寺の変は6月か7月になるんじゃないでしょうか。
本能寺の信長は、死ぬ前に必ず主人公を思い出す⁉
大河で死ぬ間際の信長って、だいたいその時の主役を思い出して名前を呼ぶんですよ。「江よ……」とか「いえやすーッ!」とか。絶対思い出さないだろうと思いますけど、それか直接名前は言わなくても、それとなく匂わすような。やっぱり、あれだけの大事件にちょっとでもいいから主人公を絡ませたいっていう気持ちが、作り手にあるんでしょうね。
「豊臣兄弟!」なら小栗旬さんの信長が、「サルは元気か。いやそっちのサルじゃなくて弟よ。サルの弟、もう一度会いたかった」なんていうセリフがあるかもしれません。実の弟の信行を暗殺してますからね、信長は。「オレたちはあの兄弟のように仲良くはできなかった。あの兄弟がうらやましい」「あんな弟がオレにもいたら」って、秀長の名前も出て来たりして。
「利家とまつ」では、萩原健一さんの光秀が凄い数の鉄砲と弓で攻め込みましたね。「光秀と思われます!」という報告に、反町隆史さんの信長が「……で、あるか!」。乱戦のさ中に、唐沢寿明さんの前田利家から献上された太刀を見ながら「犬(千代=利家ですね)!」とつぶやくんです。
そのとき狂気の笑みを浮かべた染谷将太さんの信長
「どうする家康」だと、岡田准一さんの信長は、襲撃してきたのは松本潤さんの家康だと思い込んでました。「いえやすーッ!」って叫びながら歩き回って。オレの天下取りを継ぐするなら松ジュン家康だ、ヤツにやられるなら本望……って。実は当時、現地でも「信長を倒したのは家康だ」っていう噂も立ったそうですね。
でも、門の外にいた光秀の顔を見て、信長はブチ切れるんですよね。おめーじゃねえよ! みたいな。ほんとに直に会ったら、すぐさま鉄砲で撃ちあって終わりでしょうけど。
もうそういうのはナシにして、正統派に戻して欲しいなあ。最近なら「麒麟がくる」ですね。染谷将太さんの信長が「そうか……十兵衛かあッ」と、怒ってるのか泣いてるのかわからない狂気の笑みを浮かべ、自分の矢傷の血を指につけてペロッとなめると、「……であれば、是非も無し」。そこから槍を取って戦い始めるわけです。
一方の長谷川博己さんの光秀は、本能寺の敷地の外で床几に座ったままじっと動かずでした。こういうほうがリアルで正統派。「豊臣兄弟!」でも、“主人公名”は抜きのほうがいいですけどねえ。
主な参考文献:春日太一『大河ドラマの黄金時代』NHK出版新書


