コロナ禍2年目で数千万円の利益を叩き出す
コロナ禍1年目、この診療所の収支はとんとんだったが、2年目は数千万円の利益が出た。法人の内部留保である積立金も一気に数千万円増えた。この開業医は「うちは僕が1人で打ちましたが、医師が複数いたり、看護師に注射を打たせたりして、もっと荒稼ぎしたところもあったに違いない」と話す。
財務省によると、ワクチン接種事業の予算が最も多かった21年度は2兆3396億円が投入された。
内訳はワクチン代が7000億円、1回2070円の基礎単価に時間外・休日加算も含めた医療機関の接種費用が6558億円、接種会場費や医師確保などの「接種体制確保事業」が7342億円、「週100回以上を4週間以上行えば1回につき2000円を加算」といった診療所などへの「接種促進事業」が2496億円となっている。
特に接種体制確保補助金は、接種会場の借上代や医師らを確保するための経費などを自治体や診療所などに補助するもので、補助対象経費の範囲は何ら制限がなく、医師らの人件費単価を上乗せする場合にも、上限が設定されていなかった。
そのため、地域によっては医師の獲得競争が激化し、通常の医療単価(東京都の場合、時給で医師7550円、看護師2760円、事務員1560円)の3倍を超える事例が各地で報じられ、時給2万~2万5000円や日給17万5000円という事例もあった。
「これは行政の失敗」
大阪の総合診療医の谷口はこう指摘する。
「これは行政の失敗やと思います。コロナを診たくないという医師に診察させるのはカネを積まないといけませんが、ワクチン接種なら簡単ですし、感染のリスクがあるわけではありませんから、いくらでも人は集まったと思います。
僕なら医師や歯科医師だけでなく、研修医、看護師、薬剤師、医学生、看護学生などにも接種させて、アナフィラキシーなど緊急事態に対応できる医師をワクチン会場の監督として置くような方法にしたでしょう。緊急対応はまともな医師ならたいていできます。米国では、コロナワクチンやインフルエンザワクチンの接種は薬局やスーパーマーケットでも受けられた。
僕が行政の人間なら『米国でできることは日本でもできるはずだ。みんな協力してください』と強く主張したでしょうね」
財務省の調査で明らかになった診療所の平均利益剰余金1億2400万円(22年度)はコロナ禍のわずか2年間で1900万円増えており、ワクチンバブルが影響した可能性は十分ある。

