代打に出てホームラン打っちゃう“メジャー代理人”

軍事以上に優れてたのが、国を治める力でした。大和国・紀伊国・和泉国――今の奈良県、和歌山県と三重県南部、大阪府の南西部などを持つ100万石の大大名として、秀長は大和郡山城に入ります。その領地の治め方は、江戸時代のあっちこっちの城下町のお手本になりました。特にめんどくさいお寺や神社の勢力が強かった大和国も、一度の内乱も起こさずにしっかり治めたんです。

秀長は“メジャーリーガー秀吉”の代理人みたいなところがあります。秀吉とエージェント契約を結んで、外の人との折衝なんかもやってくれる。これをきちんとこなせる人が身内にいたっていうのは、秀吉にとって大幸運でしたね。

松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)
松村邦洋『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)

信長や家康は、何だかんだ言っても殿様育ちですから、生まれた時から周りに家臣はいるわけで。武士の出じゃなかった秀吉は、それを自分で調達しなきゃならなかったんです。でも、一番近いところに秀長がいた。本来なら頭を下げてよそから雇わなきゃならないところですよ。

秀長がすごいのは、秀吉の代わりに軍を率いて出ていって戦に勝っちゃうところ。代理人が代打でバッターボックスに立ってホームラン打っちゃうようなものです。しかも、それを秀吉の成績にカウントして涼しい顔をしてる。なかなか出来ないことですよね。

天下取りは、決して秀吉1人の力じゃなかった。「豊臣兄弟!」は、時にケンカしながらも手を携えててっぺんを目指すこの兄弟を追いかけていくわけです。この「おとうと太閤記」がどう描かれていくのか――この一年、ボクはすごく楽しみです!

(構成=西川修一)