追悼登山で大雨を晴れさせた初代隊長

標高488メートル。東京を一望する高尾山の中腹に、夏の間だけ開くビアガーデン「高尾山ビアマウント」があります。初秋の風に吹かれながら飲むビールは格別です。

私たちは2010年から、毎年ここで顔を合わせてきましたが、コロナ禍でしばらく途絶えていました。今日は久しぶりの再会です。唐揚げに焼きそば、炭火焼きの香り。ピザやスパゲッティ、麻婆豆腐に棒々鶏。キンキンに冷えたビールが、どの料理にもよく合います。

ここに集うメンバーは、私たちが提供する統合人事システムを使ってくださっているお客様なのですが、この会は仕事を離れた「オフ会」として続いてきました。

きっかけはユーザーコミュニティに「初代隊長」と呼ばれる登山好きがおられ、「高尾山で飲む一杯は最高なんだ」と話してくださったことです。「それならみんなで行きましょう」と呼びかけたところ、毎年恒例の名物企画になりました。

当初20人程度だった参加者は50人、70人と増え、100人を超えたこともありました。家族や友人など誰を連れてきてもいいので「はじめまして」のメンバーもたくさんいます。胸に貼った「高尾山ビアマウントの会」のオリジナルステッカーが、仲間の印です。人事のお仕事に関わるメンバーはみなさん社交的ですぐに打ち解け、あちこちで笑い声が絶えません。

高尾山は、就学前の子どもでも登れる優しい山ですが、自然の豊かさは都内とは思えないほどです。参加者には、麓から本格的に登る人もいれば、途中までケーブルカーを使ってハイキングを楽しむ人もいます。そして私のように、ケーブルカーで直行して純粋に乾杯だけを楽しみに来る人も。アプローチはそれぞれですが、最後にはみんながこのビアガーデンに集まり、無事の到達を喜び合います。

長年継続していると、エピソードにも事欠きません。最も感動的だったのは、この会を発足させてくださった「初代隊長」が亡くなられた年でした。その方は強力な晴れ男で、どんなに天気予報が悪くても当日は必ず快晴になりました。ところが追悼登山として企画したその年は、高尾山のせせらぎが濁流になるほどの大雨でした。

あらかじめ「ケーブルカーとビアガーデンが休業しない限りは決行」と決めていたので、多くの参加者がずぶ濡れになりながらもやってきました。ところが、私たちが到着した途端に奇跡のように雨が止み、雲間から陽光が差し、やがてきれいな青空が広がったのです。誰ともなく「隊長が来たんだ」の声があがり、笑顔で献杯したのでした。

年に1度だけの催しですし、全員が毎年参加するわけではありませんが、誰の心にも楽しい思い出としてあり、次に参加できる日を心待ちにしている――これからもそんな集いでありたいと思っています。

私たちは、約1200の法人を支える、統合人事システム「COMPANY」を開発する企業グループですが、広い意味でのサービス業と捉えています。お客様への理解とリスペクトを何よりも大切にしています。親会社であるワークスヒューマンインテリジェンス(WHI)最高経営責任者の安斎富太郎は、「原理原則」とよく言います。判断に迷ったとき、トラブルが起きたとき、一貫性がないと人はついてきてくれません。私にとっての「原理原則」は、人を理解し、敬意をもって接することです。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)

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