いまもヨーロッパに生息する魔女の実態
頭にトンガリ帽子をかぶった黒い服の女性が、ほうきにまたがり空を飛びまわる――。
それが我々のイメージする典型的な魔女の姿だろう。ハロウィンが近づき、お店のディスプレイなどでそんな“魔女”を目にする機会も増えてきた。
「魔法使いサリー」や「魔女の宅急便」、「ハリー・ポッター」など……。魔女は昔から童話やアニメ、ゲームなど頻繁に登場し、少年少女の憧れの的だった。かく言う筆者も、幼稚園時代「東映魔女っ子シリーズ」の人気アニメ「ひみつのアッコちゃん」に夢中になり、コンパクトをのぞき込んで「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン……」と呪文を唱えては、変身した自分を想像してうっとりしたものだ。
しかし、そんな魔女を、空想の産物だと思い込んでいないだろうか。実は、そうではない。ヨーロッパのとある国には、現在も伝統的な魔女が実在しているというのだ。
魔女と言えば、16~17世紀のヨーロッパで行われた大規模な魔女狩りによって滅びたと考える人も多いだろう。
元々は反キリスト教者を裁いていた異端審問所が中心となり、民衆の中から魔女と思しき人をあぶり出し、不当に裁いていった。さらには近代化によって伝統的な風習が失われたこともあり、魔女はこの世から完全に姿を消した……と思われがちだ。
ルーマニアに多いワケ
しかし、実際に組織的な魔女狩りが行われたのは、カトリックやプロテスタントの多い西欧諸国が中心。正教会が信仰されている東欧諸国では、異端審問所にあたる機関が存在せず、大規模な魔女狩りは行われなかったというのだ。
魔女狩りからも、近代化の波からも逃れ、魔術などの民間信仰を今も大切に守り継いでいる国が存在する――ルーマニアである。ドラキュラ伝説でも知られるこの国では、魔術や魔女が当たり前に存在しているという。
現代の魔女とは一体どんな姿で、どんな魔術を操るのか。また、それは日本のアニメなどで描かれてきた従来のイメージとどう違うのか。『呪文の言語学』(作品社)の著者で、ルーマニア在住の言語学者・角悠介さんに聞いた。


