FV_楽天経済圏

手数料の安さや取扱商品の多さから、ネット証券の人気が高まっている。中でもNISA口座の開設が集中しているのが楽天証券とSBI証券で、これからNISAを始めようと考える人の中には、どちらにしようかと迷っている人も多いのではないだろうか。そこで、自身も楽天証券にNISA口座を持ち、活用しているというファイナンシャルプランナーの田中香津奈さんに、楽天系の金融サービスの上手な活用方法について教えてもらった。

「ポイント獲得」に着目するなら楽天証券がおもしろい

「NISAを始めてみたい」という投資ビギナーが最初にぶつかる壁、それは「どの証券会社に口座を開設するか」だ。NISA口座数では楽天証券とSBI証券が一、二を争う中、2024年12月末に楽天証券が業界最多となる600万口座超を達成した。

田中さんは「まず楽天関連のサービスをよく使う方、楽天ポイントを貯めたい方には、楽天証券をお勧めします。それ以外の方でVポイントなど、楽天ポイント以外を貯めたい方には、SBI証券をお勧めしています」と言う。

Vポイントは、2024年4月にTポイントと統合して会員数を大きく増やして追い上げているが、ポイントサービスでは楽天が先行してきた。田中さんも「ポイントに着目するなら、ポイントを獲得するチャンスを多く提供する楽天証券がおもしろい」と話す。

給与口座を楽天銀行に、もしくは楽天カードで積み立て

ネット証券会社に口座を開設するだけでは、投資は始められない。「証券会社の口座に、どうやって入金するか」を考える必要がある。方法は大きく2つある。

1つ目は、銀行口座から振り込む方法だ。ネット銀行の口座を持っていれば、証券会社の口座への振込手数料は無料のことが多い(預金残高に応じて「月○回まで無料」などの制限がある場合もある)。

定期的に銀行口座から証券会社の口座にお金を振り込むなどしておかないと、積み立て投資をする場合などは特に「せっかく積み立ての設定がしてあったのに、残高(買い付け可能額)が足りず、投資信託の購入ができなかった」ということが起きる可能性がある。

楽天証券の場合、楽天銀行に口座を持っていれば、「マネーブリッジ」という口座連携サービスが利用できる。設定すると資金移動サービスである「自動入出金(スイープ)」が使えるので、楽天証券で商品を購入する際には、自動的に必要金額が楽天銀行から入金されて取引ができる。田中さんは、「特にお勤めの方で楽天銀行を給与口座にできるのであれば、楽天銀行に口座を開設して給与口座に指定し、マネーブリッジの設定をしておくのはよいやり方です」と話す。

一方、「楽天銀行以外をメインバンクにしていて、楽天証券の口座残高を管理するのが面倒という方は、楽天カードを利用するといいでしょう」と田中さんは提案する。

これが2つ目の方法、「クレカ積立」だ。楽天カードのクレジット決済で投資信託の積み立てを行うもので、最初に設定しておけば、毎回自動でクレジット決済されるので、証券口座残高を気にする必要がない。

さらに、クレカ積立にすると、ポイントが貯まりやすいのも魅力だ。

利用する楽天カードの種類や、購入する投資信託商品によってポイント還元率は異なるが、例えば年会費無料の楽天カードの場合、月10万円まで0.5%から1%のポイントが還元される。

楽天カードでクレカ積立を行った際のカードの種類別ポイント進呈率
カードの種類 年会費 代行手数料
年率0.4%(税込)以上 年率0.4%(税込)未満
楽天
ブラック
カード
3万3000円(税込) 2%
楽天
プレミアム
カード
1万1000円(税込) 1% 1%
楽天
ゴールド
カード
2200円(税込) 0.75%
上記以外
の楽天
カード
永年無料 0.5%
楽天証券のクレカ決済は、毎月100円から10万円まで積み立てが可能で、決済額に応じて楽天ポイントが付与される。ポイント還元率はカードの種類と購入する投資信託商品の代行手数料(信託報酬のうち、販売会社が受け取る手数料)によって決まる。「楽天ブラックカード」の申し込みには、楽天カードが定める条件がある(詳細は楽天カードウェブサイトに掲載あり)。
※2024年12月現在。

「商品購入ごとの確認は必要ですが、年会費無料の楽天カードでいうと、投資信託のうち、信託報酬(手数料)が低いインデックスファンドのポイント還元率は0.5%、それ以外のアクティブファンドは1%を目安にしておくとよいでしょう。もし毎月10万円をアクティブファンドで積み立てた場合、1年で合計1万2000ポイントがもらえる計算になります。積み立て投資は毎月のことなので、ここでポイントが得られるのは大きなメリット」と田中さんは続ける。楽天ポイントは、楽天市場などで買い物をする場合には1ポイント1円として使えるので、1年で1万2000円分にもなる。

多様なポイント獲得のチャンス、活用次第でさらに増やせる

楽天カードによるクレカ積み立てに加え、楽天グループのオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」でも同様に投資信託の積み立ての決済ができ、月5万円までなら0.5%のポイント還元が得られる。つまり、楽天カードと楽天キャッシュを組み合わせると、投信積み立てで月15万円までポイントを得ることが可能となる。

実は、楽天証券のデフォルトの設定では、投資信託商品の購入で貯まるポイントは「楽天ポイント」ではなく「楽天証券ポイント」という別のポイントになっている。楽天証券ポイントは楽天証券でしか使えない上、2年の有効期限がある。「それを知らず、有効期限を過ぎてポイントを無駄にしてしまう方もいます。設定画面で『楽天証券ポイントコース』から『楽天ポイントコース』に変更しておくと、楽天証券で貯まるポイントもすべて楽天グループで使える楽天ポイントになります」と田中さんは注意を促している。

さらに楽天証券では、投資信託商品の購入以外にも、さまざまなポイント獲得のチャンスがある。

その一つが、「資産形成ポイント(ハッピープログラム)」で、投資信託の残高が一定金額に達すると、さらにポイントが得られる。例えば、月末残高が初めて10万円に達した場合は10ポイント、30万円に達した場合は30ポイント、100万円に達した場合は100ポイントが付与される(対象外のファンドあり)。

資産形成ポイント(ハッピープログラム)
月末時点の残高
※初めてこの金額に到達した場合に適用
進呈ポイント
10万円 10ポイント
30万円 30ポイント
50万円 50ポイント
100万円 100ポイント
200万円 100ポイント
300万円 100ポイント
400万円 100ポイント
500万円 100ポイント
1000万円 500ポイント
1500万円 500ポイント
2000万円 500ポイント
※2024年12月現在。 ※2022年4月以降の残高が対象。 ※対象外のファンドもあり。

また「投資残高ポイントプログラム」では、「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックスファンド」「楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド」など、低コストで長期保有に適した特定の投資信託商品については、保有しているだけで毎月ポイントがもらえる。

こうして貯まったポイントは、楽天市場などでの買い物に使ってもいいし、JALやANAのマイルに交換することもできる。楽天証券だけでなく、楽天市場や楽天モバイルなどで貯めた楽天ポイントを、1ポイント1円として楽天証券で投資することも可能だ。ポイントは、家計にはもともと存在しなかった存在。給与やボーナスなどの収入の中から投資するわけではないので、家計に影響を与えることなく投資ができる。

「ポイント」も資産という観点で新たな投資に活用

NISAなどを活用して資産形成をする場合、リスク分散のためにも、毎月決まった金額分の投資信託を購入し続ける、積み立て投資が初心者にはお勧めだ。最初に設定しておけば自動的に積み立てられるので、手間もかからない。しかも楽天カードによるクレカ積立にすれば、何もしなくてもポイントが貯まっていく。加えて、楽天系の金融サービスをはじめとした“楽天エコシステム(経済圏)”の活用次第では、さらにポイントを貯めることができ、そのポイントを投資に回すこともできる。冒頭で田中さんが「ポイントに着目するなら、楽天証券がおもしろい」と話していた理由はここにある。ゲーム感覚でポイント増加、ひいては資産増加に向けたモチベーションを高められるところにその醍醐味があるのだ。

ただし、「ポイント還元率などは頻繁に変更されるため、時々楽天証券や楽天ポイントクラブのウェブサイトを見て、確認するといいでしょう」と田中さんは続ける。

クレカ積立を活用すれば、毎月自然にポイントが貯まっていく。給与などの収入には所得税や住民税がかかるが、これらのポイントにも税金がかかるのだろうか。

「楽天ポイントに限らず各種ポイントは、保有しただけで税金がかかることはありません。『ポイントを利用した際、一時所得や雑所得に該当するものがあり、一定額以上利用しているときに、初めて確定申告が必要かどうかを判断する』ことになります。例えば、一時所得には特別控除額(最高50万円)がありますので、年間50万円分を超えるポイントを利用していなければ課税対象とはなりません(ポイント利用以外の一時所得がない場合)。還元率1%のクレカで50万円超に相当するポイントを獲得するには、5000万円を超える決済をする必要があるため、当てはまるケースはさほど多くはないと思いますが、ポイントを上手に活用していく上では、税制改正などの情報を定期的に確認する必要がありますね」と田中さんは説明する。自身のポイント利用が課税対象になるかどうかが気になる場合は、税務署への確認を行うとよいだろう。

「還元されたポイントを投資に回せば、本来よりも少ない資金でNISAの積み立て投資ができることになります。ぜひ上手に活用してほしい」と田中さんは新たな視点を示す。物価上昇が続く今、家計に占めるポイントの価値は日々高まっている。今、楽天ポイントをはじめとした各種ポイントを貯めている人も、ポイントは貯めていない人も、せっかく投資を始めるなら、証券会社選びの観点に「ポイント獲得」を加えてみてほしい。資産形成の道のりは長く続く。よい時ばかりとは限らない。そんなとき、獲得したポイントが道のりを彩り、歩みを元気づけてくれることに期待したい。

(取材協力=田中香津奈 執筆=大井明子)