トップセールスとそうでない人は、面談をするだけで判別できます。売り上げがかんばしくないときに「今後の対策をどう考えているか」と尋ねてみると、トップセールスは売り方の切り口を変えたり、客層や商品を変えるといった「質」の工夫を挙げてきますが、そうでない人は、やり方は変えずに訪問回数を増やすというような「量」の話に終始します。

しかしこの低成長時代、売り方を変えずに訪問回数だけを増やしたところで、契約に結びつく可能性は低いと言わざるをえません。

セールスのやり方・質を変えるのは確かに勇気がいります。野球選手の打法と同じで、フォームを変えれば一時的な不調におちいることも覚悟しなくてはなりません。

それを乗り越えて成功にたどり着くには「打率を計算する」、つまり現状の数字の分析を基に対策を立てるのがいいでしょう。例えば過去3カ月の顧客へのプレゼンテーションを振り返って、採用された率を計算してみるのです。採用率が3割と出たらその数字が社内、あるいは同業者の中でどのような水準にあるかを考えてみる。低ければ不採用の案件を個別に振り返って、敗因をあぶり出してみてください。なぜ採用されなかったのか、その原因をしっかりと見極めることで勝つために何をすべきかが自覚でき、行動に反映されるようになるでしょう。

もちろん、ここで「自分がすべきこと」の答えの精度を上げるには、知識や情報も必要です。といっても、やみくもに情報のインプットを増やせばいいのではなく、それをどのように活用すれば自分の仕事にプラスになるか、という視点が重要です。

最近の営業マンはおしなべて情報収集に熱心ですが、その中で「できる人」は情報収集の量そのものよりも「気づき」の多さが突出しているのが特徴です。本を読んだり映画を見たり、普通に街を歩いていても、目に入るものがすべて仕事のヒントになっていく。仕事のことがいつも頭の片隅にあるから、気づきも多くなるのでしょう。

私どもで開催する営業セミナーの席上でも、「会社から言われたから出席した」というスタンスの人と、「学べるものは何でも吸収してやろう」と食らいつくような目で臨む人とでは、実際の営業成績を見てもその差は歴然です。何でも吸収しよう、アンテナに引っ掛かる方法があればとりあえず試してやろうと考える人は、やはり営業成績を上げ続けていくものです。

また、気づきやアイデアを成果につなげるには、考える時間もいります。私は過去に富士ゼロックス、リクルートと2社で営業職を経験し、その後起業に至りましたが、休日の朝は平日と同じ時刻に起き、一人で今後の仕事に思いを巡らせるのが習慣になっています。休日は家族も遅く起きてくるので、中断されることもありませんし、朝のクリアな頭であれこれ考えるといいアイデアが浮かぶことも多い。自分にとっての充実した時間になっています。

このように意識して考える時間を持つことも、仕事の成果を上げるのに一役買っているのかもしれません。

(構成=石田純子 撮影=宇佐見利明)