福井県で10年ぶりに上場企業が出た。業務用制服のネット通販を手がける「ユニフォームネクスト」だ。90人の社員の多くは地元出身で、学歴やキャリアでは「ピカピカ」とは言えない。だが福井でベンチャー支援をする岡田留理氏は「これほど成長意欲が高く個性豊かな人材がそろう組織には初めて出会った」という。急成長企業のもつ秘密とは——。

個性豊かな人材を集めて急成長した「地方ベンチャー」

画像提供=ユニフォームネクスト
福井県内の企業で、10年ぶりに上場を果たしたユニフォームネクスト

「中小企業やベンチャー企業には優秀な人材が集まりにくい」と言われる地方で、個性豊かな人材をうまく活用し、急成長を遂げたベンチャー企業がある。福井県の企業として10年ぶりに上場を果たした「ユニフォームネクスト株式会社」(以下、ユニネク)だ。ユニネクの戦略はとてもシンプルで、なおかつ力強い。人材の採用と育成に悩む地方の経営者に向けて、この企業事例を紹介したい。

私は、開業社会保険労務士を経て、2015年4月に公益財団法人ふくい産業支援センターに入職した支援機関職員だ。現在は、創業・ベンチャー支援事業を担当し、個別の相談窓口運営の他、福井ベンチャーピッチなどのイベント事業を企画・運営しながら、県内のベンチャー企業支援に取り組んでいる。

2019年6月、ユニネクで社員向けのキャリアセミナーの講師を務めたことをきっかけに、同社の外部メンターを依頼された。具体的には、勤続3年以上の一般社員を対象に希望者を募り、合計12人の社員のキャリアに関する個別メンタリング(※1)を実施した。その全員が20代半ばから30代前半の若手社員だった。

(※1)「メンタリング」とは人材育成の手法の一つ。「メンター」と呼ばれる経験豊かな年長者が、対話や助言によって本人の自発的な成長を支援することを言う。