鎌倉市で唯一の上場企業カヤックが、まち全体を巻き込んだ「鎌倉資本主義」の実験にのりだした。「みんなが東京になることを目指すのではなく、「多様性」を地方創生の世界でも生かすには、新しい豊かさの指標が必要だ」。同社CEOの柳澤大輔氏はそう話す。東京を目指さない地方のあり方とは――。

経済合理性だけなら、渋谷や六本木のほうが有利

企業が本社をどこに置くのか。そこには企業の意志や思い、戦略上の理由が投影されるべきです。面白法人カヤックの本社は鎌倉にあります。

「鎌倉」の街並みと富士山 ※写真はイメージです(写真=iStock.com/7maru)

デジタルテクノロジーを使って「面白コンテンツ」をつくるのが僕たちの仕事なので、経済合理性だけを考えると、IT企業が集積する渋谷や六本木を選択したほうが、あらゆる点で効率がよく、有利な選択といえます。

実際、2014年に上場したこともあり、陣容も拡大したので本社機能を一部横浜に移したりもしました。でも本社は鎌倉から移していません。むしろ今後も鎌倉に積極的にコミットし続けたいと思います。創業20周年を迎える今年、新たに開発拠点を鎌倉に開設し、ご縁があった方々に無料で使っていただけるパートナーオフィスもつくりました。なぜカヤックは鎌倉にこだわるのか。

コピーがオリジナルより面白くなることはない

それは、僕たちが「面白法人」であるからです。地方都市にいくと“東京の縮小版”のようなところが少なくありません。東京はたしかにすばらしい都市ですが、日本中が東京のようになったらちっとも面白くない。僕たちの考える面白さを一言で表すと「多様性」になります。

選択肢がたくさんある社会ほど面白いものが生まれる。企業の本社についても同様です。1つのまちだけに企業が集中するのではなく、個性ある企業がそれぞれの地域で、そのまちの特色を生かしながら活躍したほうが面白い。

多様性の視点からいまの日本を見てみると、地方の幹線道路沿いはどこも同じような街並みで、どこもみんな東京になろうとしているかのようです。コピーがオリジナルより面白くなることはありません。だから、地域もオリジナルを追求するべきだと思うのです。他の地域を真似したり、流行に乗っかったりするのではなく、地域独自のよさを誰にでもシンプルに届くかたちで伝えていくことが、その地域に住みたい、働きたいと思う人を増やすことにつながるのではないでしょうか。

『鎌倉資本主義』出版記念セミナー
特別対談「鎌倉から新しい資本主義の話をしよう」

登壇者:柳澤大輔(面白法人カヤック代表取締役CEO)、松島倫明(WIRED日本版編集長)
日時:2018年12月10日(月)19:00~20:30(開場予定18:30)
場所:アカデミーヒルズ(東京・六本木)
参加費:5000円
鎌倉に暮らす二人が、「つながり」と「多様性」をキーワードに、持続可能な新しい資本主義の未来について語ります。詳細はこちら。