40歳で念願のタワマンを購入した男性は、退職金で住宅ローンを完済する予定だった。しかし退職金の額が予想を下回り、定年再雇用で給与も激減。支払いは75歳まで続くが、63歳の現在、家計は毎月10万円の赤字だという。男性は29歳でメーカー勤務の娘にローンの肩代わりを頼もうとしている。「このままでは結婚できない」と悩む娘にファイナンシャルプランナーが促したアドバイスとは――。

再雇用の63歳、タワマンのローン残債2000万円で悩む

先日、大手メーカー勤務のA子さん(29歳)が家計相談にやってきた。

A子さんは、年内に結婚を考えているといい、今後のライフプランをどう考えればよいかという相談内容だったのだが、面談時間も終わりに近づいた頃、意を決したように、「実は……」と別の悩みを切り出した。

それは、現在、都内で親と同居している「タワーマンション」の住宅ローンのことだった。

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「父は今年で63歳になるんですが、40歳の時に購入したマンションの住宅ローンが75歳まで続き、残債も2000万円近く残っているらしくて。本当は60歳のときの退職金で完済する予定だったのですが、もらう額が予想より少なかったのと、以前、事故で入院したときの別の借金を返済したみたいで……。父自身は、まだ元気ですし、今の職場も少なくとも65歳まで継続して働けるようですが、すでに月々約10万円の赤字が続いています。母(59歳)は、ずっと専業主婦でした。父は、母が外に働きに出るのを嫌がるんです。いまさらパートで働くのも難しいと思います。だから、これまでも、ボーナス返済が足りないからと、私の貯蓄から50万円ほど用立てています。私が結婚して家を出てしまうと、私をアテにすることもできなくなりますし、どうすれば良いでしょうか?」

聞けば、彼女には3歳上の姉がいる。すでに結婚して、夫の仕事の関係で、子どもと一緒に海外在住とのこと。両親としては、妹のA子さんが実家に残り、仮に結婚しても一緒に暮らしてほしいような雰囲気を醸し出している。それが何となくプレッシャーで、結婚相手もなかなか紹介できないそうだ。

住宅ローン返済額は同じでも、60歳以降の年収は激減する!

A子さんには、「ご両親のことが心配なお気持ちはお察しします。でも、結婚後は同居する予定もないのですよね? そうであれば、まずはA子さんご自身のライフプランを優先的に考えて」とアドバイスしたが、実は、A子さんの悩みには、キケンな住宅ローンの要素がたっぷりと詰まっていた。

ひとつは「収入に対する甘い見通し」だ。

公的年金の受給開始年齢が原則65歳に引き上げられたことに伴い、高年齢者雇用安定法の雇用確保義務による企業の再雇用制度によって、60歳以降も希望者は継続して働けるようになった。しかし、そのほとんどが契約社員か嘱託扱いで、給与も大幅に減少してしまう。

2017年分の年齢階層別の平均給与を見てみると55~59歳は男性649万円、女性494万円だったが、60~64歳は男性479万円、女性378万円と、60歳未満のときの7~8割程度の水準に落ち込む。さらに65~69歳では、男性387万円、女性306万円と、6割程度の給与しかもらえない(図表1参照)。

一方、総務省の「家計調査(2人以上世帯)」(2017年)によれば、住宅ローン返済世帯の全体の返済月額は9万723円で、年間約109万円である。これを50歳代後半で500万~700万円くらいの年収で返済していたのが、60歳代前半になると年収は300万~500万円になってしまう。当然のことながら、収入に対する返済負担率は高くなり、家計への負担は重くなる。